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保育士の学びを日々の保育にどうつなげるか

  • 社労士法人ワークイノベーションでは、保育士164名を対象に「保育者から見た職場環境・保育の質の格差に関する調査」を行いました。

    調査結果から分かったのは、
    ・保育の質の格差を感じている人は91.5%
    ・「地域格差」「教育格差」「職員のスキルの差」の中でも、「スキルの差」を感じている人は、81%と最も多い。(複数回答)
    ということでした。

    アンケート回答者の中から個別ヒアリングを実施し、保育士が感じている問題点を探っていきます。


保育士の学びに対する危機感

「何をもって質があがったといえるのかが難しいというのは大前提ですが…」と、話し始めてくれたのはこども園で勤務しながらよっかいち男性保育士会の会長も務める日沖さん。

増えてきたとはいえ、女性に比べて圧倒的に数の少ない男性保育士、そして一人のお父さんとして、子育てイベントへの参加や、講師を招き自主的に学習会を開くなど、保育園の外に出て精力的に活動をされています。
一方で、勤務先の公立園でクラスリーダーとして後輩指導などにも従事されていますが、保育士の学びについて危機感を感じるそう。

「興味があることや学びの機会があれば、自分はプライベートでも足を運び、面白そうだと思ったら参加するようにしています。
ただ、時代は変わりました。
休みの日にお金を払って自己啓発、というのは特に若い世代にはなかなか受け入れてもらえない。
質を上げるための研修等、勤務時間のなかで行っていかなければならないが、研修の時間が取れないのが現実です。」

「月に1度の会議では、行事計画の確認や評価反省、危機管理や事務連絡などに時間がとられてしまう。もっと子どものことを話しあいたい」
と語ってくれました。

園の目標・研修のあるべき姿

一方で、研修を行うだけでは意味がないというお話も。
「現場が求めている明日から使えるような研修が取り上げてもらえないこともあります。」
まずは園の目標があり、そこから研修に落とし込んでいくのが理想。
しかし、実際に行っている研修から、実践につなげるのが難しい現状があります。

例えばよく目標に掲げられる“子ども主体の保育“
ある園では砂場を焚火に見立てて遊んでいた子どもたちが赤い絵の具を持ってきて砂場にかけた。
こういう事例こそ、子ども主体の保育だと感じますが、実際はできない理由が山のように出てきてしまいます。
「本気で“子ども主体の保育”を目標と掲げていくのであれば、絵の具を好きに使える環境にしようくらい具体的な目標が大切なのではないかと思います。」

また、日沖さんが勤務される園は公立園で転勤も多く、自分たちがやりたい保育を次年度に引継ぎ、つなげていく難しさもあるとのこと。

今後保育園が変わっていくために

今後、保育園はどうしたらよくなっていくのかを問われると、
「コミュニケーションのスキルをもっと養成校で学べるようになってほしい。」
「保育の勉強、子どもに関わることついて学ぶことはとても重要。
ただし、保育士に求められているのは、それだけではない。
何かを行う、何かを変えていくには、ファシリテーションやマネージメント、コーチングなどのコミュニケーションスキルを学び、子どもや保護者、職員同士の関わりに活かしていき、お互いを認め合うようなコミュニケーションが、保育園の環境をより良くしていくと思っています」」
とお話してくれました。

「公立園ということもあり、職員が学ぶ機会を作り、自由に保育を発展させることが難しい面もあります。
だからこそ、若い世代も、そうでない世代ももっと保育園の外に出て交流の機会を自ら作って学ぶべきだと僕は思っています。」


日沖さんのお話を聞いて

経営層や後輩など関わる人との考えの違いや公立園ならではの転勤・不自由さ。
どうしようもないとあきらめたくなるような課題もありつつ、なんとか良い方向に動いていくために自分には何ができるかと考え、行動している日沖さんの姿が印象的でした。
 
一人一人がモチベーション高く働き、スキル等を高めていくこと
そして、運営側も目標・研修をうまく使って全体を一つの方向にまとめていくこと
 
どちらも大切なことだというのは保育園だけでなく、一般企業などでも共通していることなのではないでしょうか。
日沖さんのように保育園の外に出て、幅広く様々な世界を知り学ぶことは、今後保育に関する問題を解決するうえでとても重要であると感じました。
 
日沖さん、貴重なお話をありがとうございました。
 
(保育士・社会人インターン相崎)

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