双子は別人

 ファシズムと共産主義は双生児ではない。なぜなら、兄弟は第三者の力を借りて殺しあうことはない。その関係はもはや兄弟ではない。先の大戦はファシズムが永遠の一人っ子であることを証明し、共産主義、そしてそれと手を組んだ「民主主義」の両者が真の兄弟であることを示したのである。
 現代の政治世界における問題点を詳査する時、我々は「民主主義」をいかにして超克するかという提起に想到する。なぜなら、その「民主主義」はあらゆる政治思想・理論を支配し、統括しており、時代的精神を体現しているからである。そして、我々が時代的精神としてのそれの歴史的経緯を回顧する時、なぜそれが共産主義と結託してまで、ファシズムを打倒することに全力を傾注したのかを考えざるを得ないのである。それはすなわち、現代における政治世界が志向する社会形態の具体が浮揚してくるということなのである。少なくとも、「民主主義」は、ファシズムが志向した歴史よりも、共産主義が志向した未来を選択した。この確認だけでも、「民主主義」が国家・民族に対して何を求めているのかを窺知することができるだろう。

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