デモクラシー自体は多元的構成か?
デモクラシーが喚起する問題で最も顕著で重大なものは、それが民族的・人種的混交を齎し、それによって国家の秩序や文化的一体性に危機が生じることでる。全ての人間が平等な物質条件で生活するという共産主義的理想は、デモクラシーにおける経済格差がその最大の問題であるという観念にもとづいているが、少なくとも、民族的・人種的混交よりも、それも国家に対して致命的な損害を与えることはないだろう。同質の民族・国民における経済格差が国家の核心を崩壊へ導くような影響をもたらすことはないと断言できる理由は、まずデモクラシーにおける経済格差の調整機能が発効するからである。その調整機能は、個人の自由な経済活動を保証し、人々に常に活動とその成功の可能性を与えている。これによって、経済格差は市場の永続的な競争によって解消されるか、あるいは解消に到らずとも、全ての人間の生活条件を長期的には引き上げていくに相違ない。次に、国家の一般観念の射程の問題である。国家において同質の民族・国民しか存在しない場合、その射程は、国家の領域に吻合するだろうし、またその影響力は極大的ものであるだろう。経済格差が存在するとしても、この一般観念は和議や談判によって、国家の秩序には無害な決着をいつでも生み出せることが出来るだろう。
ここで、大事なのは、第二の問題点のほうである。人種・民族の混交がデモクラシーによって国家に齎されてしまったとき、国家における精神の統一性の分裂が生じる可能性がある。それは社会の一般観念の効力が縮減されることを意味する。・・・
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