徴兵制


 徴兵制の対象が若年者でなければならないという分業原理的妄念。現代戦争は近代国家のこの兵制の傾向を容易に破却する。それは、現代戦争は、分業原理の極端としての総力戦においてもこの兵制から脱化せざるを得ないし、また敵の正規軍との戦争における限定状態からも脱化せざるを得ない社会条件を有しているからである。前者は軍隊が人民を呑み込み、後者は人民が軍隊を構成する。それゆえに、兵制を若年者の義務とする近代国家の常習は、もはや実効性も持たなければ、それによる徳躁的効果を用意しているわけでもない。あまつさえ、ここに、現代の戦争兵器の非筋力的性質が付加されること以上の、戦争という暴力現象と、肉体的に充溢した青年との必然的関係性を既定することはもはや、不可能なのである。同様に、これは性差においてもあてはまる命題となるに違いない。

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