共産主義と民族主義

 共産主義者が民族主義者に同調する時、彼らは単に資本主義を打倒するためだけに、民族主義を利用するに過ぎない。真の民族主義者はそれを見ぬかなければならない。共産主義者にとっての民族主義は、資本主義に対抗するプロレタリアートにのみ授与されるべきものであるわけだが、資本主義国と共産主義国の対立が生じたときに、彼らは共産主義国における民族全体に、一時的に民族主義を授ける。なぜならば、資本主義は民族という存在を否定するイデオロギーだからである。しかし、抑々共産主義もまた同様に民族を否定するイデオロギーなのだが、ここで共産主義者は、一民族がすべてプロレタリアートであるというような妄念をもって、その国家的対立の構造を説明せざるを得なくなる。共産主義国の中に非プロレタリアートが存在しては困るからである。そこで、彼らは民族主義というベールでもって、自国を被覆するのである。すなわち、国家的対立に於いては民族内の対立的要素を捨象するという彼らの精神様式こそが、共産主義者たちの民族主義なのである。このご都合的民族主義は疑いなく、真の民族主義者たちにとっては、詐術であり、同意してはならない罠である。

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