自殺の勝利、天寿の敗北

 死を与えられたものにするか、みずから勝ち取るものにするか、この選択だけが、勝負の分かれ目なのだろう。人間社会は敗北者の集団として、勝者が出現するのを食い止めようとするだろう。しかし、勝者が求めているのは、安楽死システムという慰安所ではないし、終末期と呼ばれる異時空間でもない。いまここで自分の下等な肉体を抹殺するための行動と技術、これである。何者かによって泥人形に封じ込められた魂を、自らのモラルによって、もとの世界へ導くのだ。本来私たちが住むべきだった真の世界に。
 そのための短剣とピストル。それ以上の知性の凝集物などありはしない。それを利用せず座して死を待つのは、泥人形としての自己を愛する敗北者たちだけだ。彼らは死にゆく者を横目に、自分は生き残ったと安堵するだろう。だが、それは後に大きな反動となって帰ってくるだろう。

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