日本国憲法II
日本国憲法の第一条は、換言すると、天皇よりも日本国憲法のほうが国家的に上位の存在であるという宣明である。しかし、なぜ、そのような形で表現されているのであろう。わざわざ、天皇を明記することは、日本国憲法の最高権威を保証することとは何の関係もないことである。なぜなら、明記しない、という行為こそが、明記されていた存在の国家的意味を消去するために、最も有効な手段である。
ここに、占領国の日本人に対する合理的な殲滅戦略をかいまみることができる。つまり、占領国は(近代イデオロギーとしての)天皇主義を抹殺していない、という事実を我々は発見するのである。なぜならば、日本人を抹殺する最良の手段は、その抹殺の任務の遂行者に天皇を任命することだからである。そして、日本国憲法第一条に天皇を明記することは、日本国憲法と天皇の共存を意味するのである。天皇は日本国憲法が存在する限り、文化としても、生存としても、生き残ることができるのである。つまり占領国はこのような魂胆をもって、日本国憲法第一条に、天皇という存在を銘記したのである。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?