国籍概念


 国籍概念は、近代国家における法的概念である。それは総べての国家の人民の属性を一元的に規定する概念である。この概念の下に、あらゆる国家存在の諸属性は存立している。国籍概念は、一人の人間と、国家という全体存在をつなげる概念である。

 これに対して封建社会においては、個人属性は国家という全体存在ではなく、家という存在によって規定される。そして、この家という存在の重層的な連関によって、国家存在が体現される。近代国家は多数の者と一つの存在の関係であって、これが法や一般観念の絶対性を裏打ちする。それに対して、封建社会では、多数の者が多数の関係において、一つの全体存在を生ぜしめる。

 国籍概念の内実を規定するものは、当然国家である。封建社会においては国家によって規定される個人属性は法的には存在しない。それゆえに、封建社会においては、個人が生活する地域社会や家において、個人の社会的属性の根本が実質的に決定されることになる。ところが、国籍概念はこのような社会的過程なしに、ただ法の一般性によって、個人の属性が付与されることになる。

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