【1】カバ様と私。



これは、私の空想の世界と現実の世界で起こった体験談です。

今から7年くらい前、私は母と絶縁した。
初めはめちゃくちゃムカついて、母を心底憎んだ。死んでしまえ!と思った。
でも、数ヶ月過ぎるとひたすら苦しくなって、惨めになって、悲しくなって、もう生きていたくないと思った。
一年くらいは死んだような心でただ生活した。

私は結婚していて、娘が二人いた。
だから自殺はできないと思った。だって、私が自殺したら子供たちや夫が自分を責めるかもしれないから。
それに事故で急死もよくない。片付けとかが出来ないし、子供たちの心のケアもできない。

だから癌になるのが最適だなと思った。病気に苦しんでる、戦ってる方には「不謹慎だ!!!」と言われてしまうけど、でも私は『病気と闘って頑張って死んでいったお母さん』という称号が欲しかった。お母さんがいなくても頑張って生きていこうって思ってもらえるように。
毎日、癌になりますようにと願いながら生きた。

何もしたくないといって、日々最低限の家事だけをして生活している私を心配して、夫は気分転換に働きに出ることを勧めくれた。
私は『何もしたくないって言ってんのに、働きに出るなんて冗談じゃない!!』と思った。
でも、そう思いながら「うん、そうやね。」と返して求人情報を見始めた。

出来そうな仕事はいくつもあった。でも、働く勇気はなかった。
だから何となく求人情報を眺めている生活をしているときに、ピンポーンとインターホンがなった。

ドアを開けると、眼鏡を掛けた少し頭が寂しい、優しそうな笑顔のおじさんが「ヤクルトで働きませんか?」と言ってきた。

ヤクルトの仕事は何となくイメージ出来た。うちに週一回来てくれているレディさんがいたからだ。
とても大変そうな仕事だなと思っていたからヤクルトで働くのは嫌だなと思った。

ヤクルトの社員のおじさんは、今仕事はしてますか?仕事探してませんか?など聞いてきた。
私は「あー、週5の仕事は探していないんですよね〜」と答えて断った。
でもおじさんはまた返事を聞きに来るからご主人とも相談してみてくださいと帰っていった。

翌週、あのヤクルトのおじさんがまた来た。
私の希望に合わせて週3で働けるように話をしてきたと言ってくれた。
まじかよ、どんだけ人手不足なんだ、と思いつつ働きたくなかった私は断るつもりだった。
だけどおじさんが笑顔でこう言った。
「まだお仕事決まってなくて良かったー、あなたみたいな人に是非一緒に働いてもらいたいと思って。」

その言葉が嬉しかった。
私を必要としてくれる場所があるんだ!と思った。

私は、ヤクルトレディになった。


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