【60】カバ様と私。ドラゴンレーダー

翌日起きると、私の脳の変化は額にまで広がっていた。上の方へ引っ張られる感覚も、昨日までよりも強くなっている。

夫が「今日は二人でデートしようよ」と言ってくれたので、お昼の後、二人で出掛けることにした。
デートと言っても子供たちが家で留守番しているので、遠出することは出来ない。普段のドライブがてら買い物に行くちょっとした外出だ。

夫が行こうとしている場所の近くに、たまに行くシャンブルという雑貨屋さんがあった。私は何となく『シャンブルに行きたい』と思ったので、夫に「シャンブルに寄ってよ」とお願いした。
最初に夫が好きな塊根植物のお店に行った。その時今まで感じたことのない感覚があった。植物から、物凄いパワーを感じるのだ。“ブワーーーッ”と脳から全身に、身震いが起る程のエネルギーが注がれる。それは“ガンバレー!!”という“声援”のように感じた。
『植物って、こんなにも人を応援してくれていたのか…。』
だから、自然の多い場所に行くと人は元気になるんだな…と思った。

次に家具屋に寄った。
別に必要なものがある訳では無いが、私たちは家具屋に行くのが好きなので、よく来ていた。この家具屋の近くにシャンブルがある。私はシャンブルへ行くのが楽しみだった。

家具屋を出て、夫が「あれ?シャンブルどっちやったかなー。」と右折した。私は脳の左側に、フワッと力を感じて“左折”なんじゃないかと思った。でも、伝えなかった。
『脳に合図が来たから、左だと思う』なんて言えるはずがない。私の不安は大きくなってきた。しばらく進んだところで夫が「あれ?もしかして反対やったかも」と気が付いた。だけど夫はそのまま走り続けて、ホームセンターに寄った。買いたいものがあるみたいだ。
時間的にももう遅いし、引き返すつもりは無いんだなと分かった。別に目的があった訳じゃないし、それでも良いかと私は思ったが、私の脳内は『シャンブルに行きたい!!!』という気持ちで埋め尽くされた。ココロちゃんが泣いている…。どうしよう…。
私は『ごめん、シャンブルはまた今度行くから、今日はもう良いでしょ?』とココロちゃんをなだめようとした。だけど、全然納得しない。『何なのこれ?だって、目的なんてないんだよ?!ただ、ちょっと見たいなって思っただけじゃん。』私は自分の変化に戸惑った。
私の様子が変なことに気付いた夫が「どうしたん?」と聞いてきた。私は「…ごめん、シャンブルに行きたくて…」と泣きながら伝えた。物凄いウザい女だなこれ…。夫は「え…ゴメン、そんなに行きたかったと思ってなかったから。今から行こうよ!」とすぐに引き返してくれた。

私の心はすごく安心して喜んでいた。
私は自分の変化が少し怖くなってきていた。

シャンブルに着いて店に入ると、私の左脳に合図が来た。『何だよ…これ。なにか探すものが有るの?』
左に進むと今度は右脳に合図が来る。脳に送られてくる合図を頼りに、何かを探す。私はMOOMINのグッズが陳列されている売り場に辿り着いた。棚の下にフローレンのグッズがある『あ…カバ様。』とそのグッズに手を伸ばそうとすると、頭頂部に合図が来た。
『上…?』見上げるとそこには、ムーミンに肩を抱かれて眠っているフローレンの絵が描かれた小さいウォーターボトルがあった。そのボトルを手に取ると、強いエネルギーが脳に届いた。『これか…』私が探していたものはこれだったのか。これが、欲しかったのか…。

私が手に持ってるボトルを見て、夫が「あれ?それ欲しいの?」と聞いてきた。「うん、これが欲しかったみたい…。脳に合図が送られてくる…。」「え?なにそれ!?他には何か欲しいもの無いん?」私は少し集中して脳の合図を待つ「…コレだけみたい。」「えー!何それ、いいなー!何か僕にも選んでよー!コノミ、2.5次元の人になっちゃったんやなー。」と夫は面白がっていたが、私は自分の変化に“怖れ”の気持ちが生まれ始めていた。

帰り道、助手席に座って手に持ったボトルを眺めていると“本当の好きな人を見つけたお祝い”と脳内にメッセージが届いた。
『なるほど…これは皆からのお祝いなのか…。』
そして自分の薬指を見て思い出した。
私は今“結婚指輪”ではなく、夫に付き合った記念で買って貰った指輪をしていた。最初の頃に聞いていたリーディングで「銀龍様との繋がりが強くなっているから、シルバーのものを身に着けるといい」と言われたが、アクセサリーを付ける習慣がなく、シルバーのアクセはこの付き合った記念の指輪しか無かったからだ。私の結婚指輪の色はピンクゴールドだった。
『運命の人とのお付き合いが始まったってことか…。』
指輪を見ながらそう思った。

その後に寄ったスーパーでも、私の脳は探している商品の場所を教えてくれた。
『私の脳みそ、ドラゴンレーダーかよ…。』

私の心は疲弊していた…。
自分の変化を受け止めきれなくなっていた。


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