「将棋星人タイトルホルダー」第3話

 ~回想シーン~ 

 田舎にポツンと立つ一軒家。

 そのそばで剣とピニシュカト(女性で見た目二十半ば)が戦っている。

 互いの駒が空中でぶつかりあい、剣の金からはビームが発射され、ピニシュカトを牽制している。

 尽(4歳)は倒れており、剣は尽を庇いながら戦っている。

 尽「ぐ……」

 剣「ったく、相手の実力もわからんで仕掛けるからだ」

 尽「ジジイ……オレなんかに構わず……」

 剣「はっ! 何処に孫の事考えないで戦うジジイがいるってんだ。安心しろ尽。オレはお前を庇ったくらいで負けやしねぇよ」

 剣に飛車が飛んでくるが、それを剣は歩三枚で防ぐ。

 バラバラと地面に落ちる歩三枚。

 ピニシュカト「これでは……ダメですね。その子がいる限り……戦いにならない」

 剣「あ? オレはピンピンしてるぜ? それともテメーが降参か?」

 ピニシュカト「私は将棋星人ベルスオーリエとして……万全の相手と戦わねば……ならないのです。でなければ……勝とうとも負けようとも悔いが残る……悔いが残る戦いなど……あってはならない」

 ピニシュカトは戦いをやめる。すると将棋盤は空へと戻っていく。

 ピニシュカト「勝負付かず……ですね」

 ピニシュカト「対局リーヴィスは戦いの決着がつくか……互いから戦いの意志が消えなければ終われない……あなたも戦いをやめたかったのですね」

 剣「孫が動けねぇんだぞ。対局リーヴィスなんかより、孫の心配が上にくるのは当たり前だろうが」

 ピニシュカト「孫が心配……ですか」

 剣「覚えとけよ。今の絶対優先は尽だが、次はテメェを徹底的に叩く。オレは孫をこうされて黙ってられるジジイじゃねぇんだ」

 剣はヤクザのようなドスの聞いた顔で、必ずピニシュカに報復すると宣言する。

 ピニシュカト「あなたはタイトルホルダーの……はず。なら……戦いこそ全て……では?」

 剣「いつの時代の話してんだ。情報が古すぎるぞ。今のオレはそんなんじゃねぇ」

 ピニシュカト「なら今のあなたは……昔より……弱い?」

 剣「はん、抜かせ」

 剣は尽をチラッと見て、またピニシュカトを見る

 剣「力ってのは誰かの為って時に出てくるもんなんだよ。対局だろうと対局リーヴィスだろうとな」

 剣は自信満々にピニシュカトに言い切る

 剣「オレはコイツのジジイなんだ」

 ピニシュカト「……わからない」

 剣「別にわからせよーとは思ってねぇよ」

 尽「ジジイ……そのセリフ臭すぎる……」

 剣「ふん、ジジイは臭い事を言うもんなんだ」

 ピニシュカト「………………」

 ~回想終わり~




 尽「で、ピニシュカトは姿消して、オレはジジイに連れられて病院行った。ジジイがオレの怪我を病院にどう言い訳したかは不明だ」

 立華「それ、いつの話なんですか?」

 尽と立華は霧を追いながら話している。

 尽「いつだったかな。オレがちっさい頃の話だから十二年前? 十三年? くらい前なのは間違いないが」

 立華「てことは、将棋星人ベルスオーリエの地球侵略が始まる前ですね」

 立華「何人かの将棋星人ベルスオーリエは地球の偵察等で来ていたと聞いていますが、まさか対局リーヴィスをした者がいたなんて……」

 尽「宇宙人と会ったって話しても信じるヤツいなかったな」

 尽「ピニシュカトに対局リーヴィスふっかけられて、負けそうになって……ジジイが乱入してこなかったら殺されてた」

 立華「だから、キリちゃんにあんなはっきり言えたんですね」

 尽「しかもオレが知ってるのは昔のピニシュカトだ」

 尽「今のピニシュカトは八爵レーヴェなんてモノになってる。なら、霧は尚更勝てない。灼かれないだけで、指先一つでやらても不思議じゃない」

 立華「街についたら、早くキリちゃんを探さないとですね」

尽と立華は街に辿り着く。将棋星人ベルスオーリエの住んでいる街なので綺麗。スラムのような雰囲気は全くない。

 尽「霧がピニシュカトと正々堂々戦う理由はないだろう。夜を待って、確実に襲えるタイミングで――」

 瞬間、爆発音が聞こえる。

 立華「まさかこれって……」

 尽「何考えてるんだ。居場所はすぐにわかりそうだが」

 立華「早く向かいましょう!」

 二人は爆発が起こった、街で一番大きな建物に向かう。

 二人は建物につき、破壊されている玄関口と、伸びてる将棋星人ベルスオーリエ(門番)を発見する。

 尽「行動が大胆すぎるな」

 立華「陽動とかでもなんでもなく、普通に障害物を壊す為に爆破したみたいですね……」

 将棋星人ベルスオーリエ「お前達地球人か!?」

 後ろから爆発を聞きつけた将棋星人ベルスオーリエ(警備員三人)達がやってくる。

 尽「……たったこれだけなワケないか」

 まだ後ろから騒ぎを聞きつけた将棋星人(ベルスオーリエ)がやってこようとしている。

 尽「まとめて来るなら、早く片付けられるんだが……」

 将棋星人ベルスオーリエ「まさかピニシュカ様のいる場所でこんな真似をするとは! 死刑だ地球人!」

 将棋盤が降ってくる。将棋星人ベルスオーリエは二人を殺す気満々

 尽「仕方ない。立華、先に行ってくれ。コイツら片付けたらすぐにいく」

 立華「えっ!?」

 尽「霧がピニシュカトと遭遇する前に、連れて逃げるんだ」

 尽は桂馬を立華に投げて、立華を建物内に吹き飛ばす(ダメージのない吹き飛ばし。地面に落ちる時、空気のクッションが発生)

 尽「信じろ。立華がピンチになったら、オレは必ず駆けつける!」

 立華「わ、わかりました!」

 立華だけ建物内に入る中は領事館のような装飾。
 誰もいないが、そこを立華は姿を隠しつつ移動する。

 立華「可能性が高いのはピニシュカトのいる場所だよね……でも、何処だろう」

 階段を登って二階に来るも、霧もピニシュカトもいない。

 立華「ここも人の気配がない……なんで?」

 ピニシュカト「邪魔だからに……決まっているだろう?」

 いつの間にか背後にピニシュカトが立っている。その手で頬を撫でられる立華。

 ピニシュカト「お前のような身の程知らずを……狩るのが好きなんだから……ん?」

 立華は手を振りほどいて、慌てて距離を取る

 立華「ピ、ピニシュカト……」

 ピニシュカト「何処かで見た顔……もしや……プリジャイン様?」

 立華「……そうです。その名は捨てましたけどね」

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