「将棋星人タイトルホルダー」第2話

 夜明け前。

 山の森の中。何処かの廃屋で尽と立華が寝ている(立華は地面に寝ている。尽は壁に寄りかかって寝ている)

 尽「!?」

 尽が目を覚ました瞬間、その廃屋が突然爆発する。

 尽は立華を抱きかかえて(お姫様抱っこ)ジャンプ。爆発を逃れ、華麗に地面に着地する。

 立華「えっ!? えっ!? な、何が起こったんですかッ!?」

 尽「爆発した」

 立華「ば、爆発!? な、何が!? そして何故ッ!?」

 尽「オレは有名人らしいからな」

 尽が後方の一画に視線を向ける。

 尽「出てこい。出てこないならオレから行くが?」

 ファルキー「へっ、さすが領土持ちディリン狩りの鏑木。この程度屁でもねーか」

 ガラの悪い将棋星人ベルスオーリエ、ファルキーが出てくる。

 ファルキー「お前は対局リーヴィスじゃなきゃ殺れないようだな」

 将棋盤が降ってくる。

 尽「おい、領土持ちディリン狩りの鏑木とはなんだ?」

 突然、どうでもいい事を気にし始める尽

 ファルキー「お前は領土持ちディリンを二人も倒しちまったからな。褒美狙い達の間じゃ、そういう名前で呼ばれてんだよ」

 尽「つまり二つ名か」

 なんだか感慨深くしている尽

 尽「フフフ……二つ名……」

 立華「なんだか尽さん凄く気に入ってる……」

 ファルキー「隙ありぃ!」

 ファルキーの飛車が向かって来る。

 立華「尽さん!」

 だが、突如その飛車は力なく盤面に転がる。

 さらに将棋盤が空に消えていく

 ファルキー「がふっ!」

 ファルキーが倒れて動かなくなる。

 立華は何が起こったんだと不思議がる。尽は特に動揺なし。

 霧「危ない所だった」

 聚楽霧。背の小さい少女(小学校低学年くらい)が、空から降ってくる。
 霧は綺麗に着地し、立華と尽の所に歩いてくる。

 霧「並の地球人にとって対局リーヴィスは処刑と同じ」

 立華「あ、あなたは?」

 霧「フフフ。仕方ない。名乗ってやる」

 霧は待ってましたとばかりに名乗る

 霧「キリの名前は聚楽霧じゅらくきり。全ての将棋星人ベルスオーリエを倒す為に生まれた地球人」

 霧「将棋星人ベルスオーリエはキリの世界をめちゃくちゃにした。だから将棋星人ベルスオーリエ)許さない」

 立華は(自分が将棋星人ベルスオーリエなので)少し焦ったような顔。

 尽は特に何も思ってない顔。

 霧「将棋星人ベルスオーリエはキリより弱い。それに地球人にすごい油断してる。これなら簡単」

 立華「で、でも将棋星人ベルスオーリエには八爵レーヴェという凄まじい棋力を持った者達がいるんです」

 霧「知ってる。別に問題ない」

 霧は何てことないかのように言う

 立華「その、八爵レーヴェは強いだけじゃなくてタイトルホルダーでないと――」

 メンゲレン「やっぱりなぁ! ファルキーの野郎、やられてると思ったんだ」

 森の中からバイクが大量に飛び出してくる。ファルキーのようなガラの悪いヤツらばかり。一台に二人のっているが、一人しか乗ってないバイクがある。それがメンゲレン

 メンゲレン「褒美を独り占めしたかったんだろうが、返り討ちにあったか。欲を出したヤツの末路だなぁ! ぎゃははは!」

 メンゲレンもその他の将棋星人ベルスオーリエも全員卑下た大笑い。

 メンゲレン「んじゃ、仕事をすませるかぁ!」

 メンゲレン達は全員重火器を取り出し、尽に向ける。

 重火器を向けられているが、尽は平然としている。
 霧も尽と同じ。立華だけ慌てている

 立華「じ、尽さんッ!」

 メンゲレン「対局リーヴィスなんてすっからヤられるんだ。こうやってちゃちゃっと済ませばいいんだよ」

 霧「一応聞く。お前らは将棋星人ベルスオーリエか?」

 メンゲレン「あ?」

 メンゲレンの注意が霧に向く。

 霧「いや、聞くまでもなかった。こんな事、将棋星人クズしかしない」

 メンゲレン「なんだテメェは? ガキでも容赦しねぇぞ?」

 メンゲレンが霧に拳銃を向ける。

 メンゲレン「ばーん!」

 メンゲレンが発砲するが、霧の前に将棋盤が落ちてきて、それが弾を防ぐ。

 霧「将棋星人ベルスオーリエは地球人にそういう事をする。キリ、許さない!」

 霧から紫の電気がバリバリと吹き出す。

 メンゲレン「何ッ!?」

 立華「紫電の輝き!? これは叡王タイトルホルダーの棋力!?」

 尽の表情が僅かに動く。

 霧「6三角!」

 メレンゲン達「ぎゃあああああああああああ!」

 霧の駒である角がジグザクに暴れ回り、メンゲレン達が一蹴される。

 立華「霧さん……その輝きは……」

 霧「そうだ。キリは叡王タイトルホルダーの棋力がある。八爵レーヴェに灼かれない。戦う資格がある」

 立華「あ、その事知ってるんですね」

 霧「当然。キリは……知ってて当たり前」

 立華「?」

 何処か霧の態度が変だと思う立華だったが、特に深く聞こうとしない。
 尽も霧の態度に反応するが、黙ったまま。

 霧が尽に視線を向けるが、別に尽は反応しない。

 霧「もうじき八爵レーヴェの一人が倒れる。そしたら、少し平和が戻る」

 立華「えっ?」

 霧「八爵レーヴェの一人がこの先の街に来てる。ソイツをキリが倒す」

 立華「……誰が来てるんですか?」

 立華はレンヴェルクが来ているのかと想像する。

 霧「ピニシュカト・レク・エンドレイ」

 立華「……エンドレイ家がきてるんですね」

 霧「ピニシュカト不運。霧が近くにいなければ、もう少し生きられた」

 尽「おい」

 立ち去ろうとする霧を尽が呼び止める。

 尽「本気で八爵レーヴェを倒すつもりか?」

 霧「当たり前。キリはウソつかない」

 尽「そうか。なら、やめたほうがいい」

 尽は当たり前のように断言する。

 尽「霧。お前では八爵レーヴェに勝てない。棋力不足だ」

 霧「……面白いこと言う」

 二人の間に険悪な空気が流れる

 立華はそれを感じ取ってアワアワしている。

 尽「見ればわかる。叡王タイトルホルダーだろうと、その程度の棋力じゃ挑むだけ無駄だ」

 霧「お前、生意気」

 尽「生意気はどっちだ」

 空から将棋盤が降ってくる

 二人は動こうとしないものの、戦う気マンマンの気配

 立華「な、何しようとしてるんですかッ! タイトルホルダー同士で対局リーヴィスなんかしないでください!」

 立華が無理矢理間に入って、険悪な空気が壊れる

 霧「……キリは将棋星人ベルスオーリエなんかに負けない」

 将棋盤が空へ戻っていく

 霧は尽と立華を交互に見る

 霧「お前達、名前は?」

 尽「鏑木尽。コイツは泉立華だ」

 霧が二人に背を向け、顔だけ振り返る。

 霧「尽、立華。バイバイ」

 霧が姿を消す。

 立華「あの、尽さん。さっき言ったことって……」

 尽「真実だ。アイツはピニシュカトに負ける」

 立華「だ、断言するんですね……」

 尽「少し訂正しようか。アイツがピニシュカトに負ける確率は99パーセントだ」

 立華「それなら訂正いらないかな……」

 尽「まだ追いつける。行くぞ」

 立華「よかった。もしかしたらキリちゃんを放っておくのかと」

 尽「死ぬとわかってるヤツを放っておくと寝覚めが悪くなる――キリちゃん?」

 立華「ええ、キリちゃんです」

 尽は霧を追いかけようとする。

 その後を立華もついて行く。

 立華「あの、なんでキリちゃんが負けるってはっきり言えるんですか? 私が言うのもアレですけど、あんなに強いのに……」

 尽「オレはピニシュカトを知っている」

 立華「え?」

 尽「負けたことがあるから、断言できるんだよ」

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