長い夢だったのかもしれない。
長い夢を見ているような感覚だった。
私は「悲観」という青いベールを被って、
この世に生まれた。
その青いベールがある以上、
世界のあらゆる出来事は、
「青」であり「悲観」である。
そのようにしか感じられないし、
そのようにしか、見えない。
それが、ベールの働き。
さらには、感覚過敏な性質も持ち合わせ、
それらが増幅されるような両親の元に
生まれた。
世の中には、悲劇ばかりが溢れ、
悲しみがあらゆるところに転がり、
私には、それらをどうすることもできない。
そう思って、生きてきた。
*
感情の出処を探して、
ひとつひとつ片付ける作業をしていた3月末に、
そのビジョンはやってきた。
目を閉じて、
平和な内的世界にいた朝だった。
静かな海辺と、
穏やかな時間が流れるテラスで、
植物に触れ、
動物に触れ、
私はゆっくりと呼吸をしていた。
しかしそれらが、突然、何の前触れもなく、
ガラガラと崩れ落ちた。
天井も壁も、そこにいた存在も、すべてが、
崩壊した。
私は、パニックに陥った。
全てが、
巧妙に仕掛けられた「罠」だったと感じた。
私の無意識層を通じて、
私は何者かに侵入され、操作され、
私の内的世界が明らかにされ、
崩壊させられたのだと、感じた。
私は、拠り所としていた内的世界を
失ってしまった。
目を開けて、現実世界を見渡した。
いつもの景色が広がっては、いた。
しかし、
現実世界で私が取り組んでいる作業が、
「間違いだ」と示されたように感じた。
悔しくて涙が流れた。
*
再び目を閉じた時、
そこに慣れ親しんだ存在の「声」はあった。
「君は"悲観"に覆われていたんだ」
崩壊したのは、
私を覆っていたベールだったと、気付いた。
「悲観」を通して見ているから、
何もかもを、悲観的に捉える。
それが崩壊したのだとしたら、
私は世界をどう見ていくのだろう。
*
ベールの崩壊から1ヶ月が過ぎた。
長い夢から覚めたかのように、
私の見える世界は様変わりした。
正確には、
世界は以前と何ひとつ変わることなく
淡々と流れている。
私の見え方と感じ方が、様変わりした。
目の前に広がる世界には、
光と平和と穏やかさが溢れている。
誰もがみな、それぞれのペースで歩みを進め、
体験したいことをそれぞれの方法で体験し、
向かうべき場所へ向かっている。
そこには、何一つ「間違い」はなく、
かといって「正しい」という視点もない。
ジャッジがない世界が、見えている。
ただただ、あるがままの私と、
私が見たいように見ている世界が、
どこまでも広がっている。
新しい人生を生きることに、なったらしい。
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