加速する現代社会
私はトランスジェンダーであります。男は言う。
トランスジェンダーと言いますと、自身の性自認が変圧されているということであり、私は男なので自認が女になり、私は女なので自認が男になり、私は男なので自認が女になり、私は女なので自認が男になり、私は男なので自認が女になり、私は女なので自認が男になり...…
循環する意識は混沌と混ざり合い、加速する。
トランスジェンダーであり、トランスミッションでもあるわけだ。
女、男、女、変速。男、女、男、女、男、変速、男女男男女男女、変速。
意識は加速し続ける。彼/彼女の脳のニューロンが焼き切れるまで思考は続く。
先に焼き切れたのは”それ”のペニスであった。
文字通り思考が停止し、ニュートラルな状態になったのである。
床にボトっという音とともに落ちたそのナニは、焦げ臭く、またイカ臭くもあった。
やがて余熱がナニを焦がし、そのナニをナニと認識できなくなるまでにかかる時間はそうかからなかった。
私は男なので自認が女になり、私は女なので自認が男になり、私は男なので自認が女になり、私は...…
ナニ...…?
加速が止まる。それは認識した。自身の滅びゆくナニを見て。
自身が男だったということ。自身は女ではなかったということ。
今の自身が男でも、女でもないこと。
失って初めてわかる、自身の価値を。
体験して初めてわかる、自身の追い求めていた価値の虚無を。
ゲイやトランスたちとつるんで行った数々の社会運動の全てが、ホモソーシャルなものであった今更ながら思う。
加速しない。思考が加速しない。
ほどなくして”それ”は旅に出ることになる。微笑みの国、タイへ。
”それ”は自身の性自認にアイデンティティを見出していたように、今度は自身の存在にアイデンティティを見出すために旅に出るのだという。
今度落ちる”それ”のナニは、憑き物なのか、もしくはパクチー臭いナニか。
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