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絵になる美しい街並みを創造する為の粉本/上大沢(かみおおざわ)石川県輪島市上大沢町 /間垣が表出する街並み


 能登有料道路の穴水ICを降りてから上大沢に行くには、輪島市街から海岸線の道を西に行くのでは無く、直に山中を走り抜けて辿り着く方が良い。その訳は何もない山中を抜ける長旅を終え、漸く海が見えた所で、突然高さ5~6メートルの間垣と呼ばれるニガ竹を使った防風柵で囲われた、普段見ることのできない「間垣の里」と呼ばれる集落、上大沢に巡り会えるからだ。
 この集落は海に接しており、冬場は特に日本海から吹く台風並みの風に毎日耐えなければならない土地柄で、その規模は周囲500m、住民は20家族70人程度で、農業と漁業を中心に生計を立て、米、野菜、魚等はほとんど自給し、お互いを支え合う生活をしているそうである。約1万本のニガ竹を使った間垣は、その用途から共有と思いきや、それらは私有で自分の家屋に接する間垣についてのみ、家族で秋に採った新しい竹を表側に差し込み、裏側の古い竹を抜き取る作業を毎年繰り返しているとのことだ。

 入るのをためらうような集落内部に間垣の入り口から入れて頂くとコモンスペース(共用庭)を有するタウンハウスに似ており、家屋と家屋の間は通路兼コミュニティスペースという感じで、子どもたちの走り回る姿を見ていると、集落全体が安心安全な住宅地づくりのモデルのように思えた。

 集落の外から見た街並みの表情は、所々に入り口を設けた間垣に加えて、高木と家屋の棟が少し見えるだけだが、水平に設けた3段ほどの横桟に縦に並べたニガ竹の様はまるで無彩色の線と面で構成する抽象画のようだ。

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