見出し画像

絵になる美しい街並みを創造する為の粉本/津和野(つわの)/島根県鹿足郡津和野町/鯉の泳ぐ用水路を巡らせた街並み


 近距離にある萩と津和野をセットにしたパックツアーはポピュラーであることから、津和野を山口県域と勘違いしている人が多い。それは津和野が島根県の最も西端に位置し、それも山口県に突き出ているため、また電車を使えばJR山口線でアクセスするためだと思われる。  
 この津和野の起源は鎌倉時代に吉見頼行が元寇警備のために三本松城を築いたのが始まりだが、山陰の小京都と言われるような街を、言い換えれば鯉の泳ぐ用水路を巡らせた風情ある城下町を形成したのは関ヶ原の戦い後に入府した坂崎直盛。その雰囲気は後に入府した亀井家に引き継がれて醸成、今でも殿町地区や本町界隈景観形成地区と呼ぶ本町や新丁、祇園丁、鉄砲丁、万町等の街区で感じる事ができる。

 これらの地区に建ち並ぶ建物の多くは江戸期から明治・大正・昭和に建てられた伝統的建造物。その外観は屋根をこの地の石州赤瓦で、また壁面を白壁やなまこ壁、格子戸で設え、津和野独特の歴史や風情を感じさせる街並み景観の創出に繋げている。見所は本町の重厚な佇まいの造り酒屋や殿町の家老多胡家や大岡家の長屋門等を中心とした街並み景観。

 その他で興味深いのは安野光雅美術館に展示されている安野光雅さんの作品。その多くは外国の美しい景色の水彩画。何れの国のそれにも美しい街並景観が描かれており、これらも念入りに見て欲しい。切り取られた画面の中に、街並み景観の形成手法や役割、大切さが垣間見られる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?