歯科妄想劇場(十夜ver.)
目に止めていただきありがとうございます。
原文から、名前のところ変えてます。
十夜=読み方はご自由にどうぞ。
また、原文は3分割して投稿してあったのですが、改行等は整えず、元のままです。読みにくい部分はごめんなさい。
では、始まり始まりー
私の行く歯科医院はオフィス街にあるせいか、待合室には親子連れはほとんどおらずビジネスマン風の男性が多い。普段、ワイシャツ姿の男性など見慣れない私にとってはとても眩しく見えるのだが。。。
まあ、こんな所で声を掛けてくる人などいないか。。。ドキドキしてしまう自分がバカらしく思えてくる。予約制なので一人一人入れ違いに呼ばれていく、他の人との接点はない。
自分がここに居ることを少し場違いに感じつつ、名前が呼ばれるのを待つ。
『十夜さーん、どうぞー』順番が来た。
呼ばれるのはいいが。。。(他の人に名前がバレるじゃないか)、こういう所はちょっと不安にはなる。セカンドオピニオンで訪れた他の歯科に替えたほうが良かったかな。
ひんやりとした診察椅子に座る。どうしても緊張してしまう。今日は、ひざ丈のワンピースで来てしまった。椅子がゆっくりと倒されていくが、どうも滑ってしまい体勢が不安定になる。フラットになった診察椅子で、仰向けになったままモゾモゾ動いて衣服を直すのも何だかおかしい気もする。ワンピースがずり上がってないかな、ストッキングの足、見えすぎてないかな。。。客観的に見ると、私は一体どんな風に見えているんだろう?
考えていると、歯科衛生士さんの声が。『椅子を動かしますよ〜』頭のほうが下がっていくにつれ、また身体が滑るような気がして、椅子の頭の位置に身体をずりあげて合わせる。頭がちょっと下がって横たわっている感じ。なんだか落ち着かなくてモジモジしてしまう。
医師がきた。
『十夜さんこんにちは〜。では、始めますね〜』そう言いながら、私の顔にフェイスカバーを被せる。
神経を抜く治療は今日で4回目だ。なかなか抜ききれないのか、医師の指先の動きによっては、キンッと鋭い痛みが走る。
『ここはどうですか?』ビクッと身体が動く。
神経に障る痛みは、手を上げて知らせるまでもない。身体が勝手に反応する。
『これはどう?』ビクッ!
『おかしいな〜。これは?』ビクッ!ビクッ!
すごく痛い訳ではないが、我慢できるわけでもない。でも、口を開けたままだから、説明はできない。
『神経が細く枝分かれしているのかもしれませんね』一生懸命に手先を動かして、何やら操っている様子の医師。申し訳ないな。けれど、もし取り残しがあったままだと、それも怖いし。私も一生懸命に痛みがあることを伝えないと。私の感じる痛みが手がかりになるんだから。。。
『器具ではちょっとわかりにくいかな。。。』
医師はそうつぶやくと、『ではちょっと失礼して』口が塞がれる感触があったと思う間もなく、ヌルリ。。。私の口の中にヌルリとした生温かいものが押し入ってきた。
(。。。何!?)フェイスカバーで視界は遮られているが、押し当てられているのは唇?口の中のものは。。。舌??カバーを通して、湿った生温かい息を感じる。そして口の中で、歯の一本一本を丹念に弄(まさぐ)るように動く。。。舌!?頬に溢れ出たよだれが伝う。私のよだれなのか、医師のよだれなのか。息が。。。苦しい。。。これは?診察なの?
誰かに見られていたら?さっきの歯科衛生士さんは近くにいるんだろうか。
不意に弄っていた舌がヌルっと抜かれた。
『いったんうがいしてくださいねー』
フェイスカバーが外され、倒されていた治療椅子がゆっくり元に戻る。私は、何も言えずうがいをする。コップを持つ手が冷たい。
『はいもう一度倒しますよー』と医師の声。椅子が動き始める。またズルズルとズリ落ちそうになり、身体をくねらせてしまう私。もう一度フェイスカバーをされ、思わずビクッと身体が反応した。自分でも大袈裟だと思うほどに。
『はい、口を開けて』医師は口の中を目視し、『今日はこのまま薬を詰めておくので、また次回様子を見ましょうね』と言って、手早く処置を済ませた。
『はい、今日はこれで終りでーす』
医師は、特にそれ以上言い残すこともなく、次の患者さんの元へ行ってしまった。痛みはなかったけれど。。。あれは一体何だったのか?頭が追いつかない。椅子が戻され、私はうがいをして待合室に戻った。
次の患者は近くに勤めるサラリーマンだ。
『ねえ、先生』
何度か通っていて顔馴染みなのだろう。
『さっきのあれ、あれも診察の一環なの?』ゆっくりと椅子が倒される。
男の問いに、医師は答える。『そうですよ』
男は目を丸くし、笑いながら言う。
『ボクもやってほしいな〜』
『いえいえ、あれは人によるので。あなたにはしません』
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