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樋水の流布、萩くんのお仕事+関連作品✒

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「樋水の流布」本編「萩くんのお仕事」本編 +関連作品 対談二編が入っています。
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#池田

萩くんのお仕事 第一話

                   みとぎやの小説・ひとまず投稿⑩  ・・・実は、ドラマの脚本が決まっている。劇団の方は、なんとか、メンバーに任せて、公演を回していたが、その他のこともあり、その仕事がずれ込んでいた。もう、手がいっぱいだぁ・・・。  諸島部から、故郷の中央部に戻ってきていた萩。拠点はいくつかある。はっきり言うと、その実、いざという時、テレビ局や、その他、関係者から、逃げる為にそうしている。  自転車で、食糧を買い出しに、コンビニに行こうとしたまでは良か

「樋水の流布」 第四話

先生が退室されると、彼は、座り直して、初めて、私と目を合わせた。 「どうかな?流行りの店で、スーツを誂えたんだ。似合うだろう?」 「うん、カッコいいね。スタイルいいから、似合うよ。モデルみたいだね。イケメンで」 「・・・はあ、心の込もっていない言い方だなあ・・・そういう風に、淡々と言うんだ・・・前々から、思っていたんだ。相変わらずなんだ、流布は・・・」 「・・・そんなことないです」 「先生とは、どうなの?」 「先生と弟子ですよ。・・・それ以上も、以下もありません」 「まあ、

「樋水の流布」 第五話

 そんなこんな、しているうちに、私は、十倉坂大学の文学部を卒業した。卒論は、勿論、竜ヶ崎先生について、その魅力を考察したものだった。これも、レビューに違いない。お蔭様で、優秀な成績、に近いもので、卒業することができた。  その卒論だが、かなり、気合を入れることができた。これこそ、先生のことながら、お伺いを立てるわけにいかなかったが、卒業論文集では、巻頭に載せられてしまい、自然と、竜ヶ崎先生の手元に行く。 「レビューの方もそうでしたが、これも有り難い、嬉しいものです。こんな

「樋水の流布」 第七話 (最終回)

 ドアは、引いても開かない。押してみようかな・・・。少し、力を入れると、事も無げに、その開かずの扉は開き、明るい光が、差し込んできた。 「流布?!」  えっ?・・・ここって・・・?・・・えーっ?! 「全く・・・」  わあ、凄い、好い顔して、見降ろしてる。クスクスしながら、近づいてきて、扉の中から、私の手を引き、身体毎、引っ張り出してくれたのは、当の竜ヶ崎先生だった。つまりは、この私の部屋の斜め上に、先生の仕事部屋があった、ということだった。 「なんで、裏を書く。そう