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樋水の流布、萩くんのお仕事+関連作品✒

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「樋水の流布」本編「萩くんのお仕事」本編 +関連作品 対談二編が入っています。
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#国語がすき

萩くんのお仕事 第一話

                   みとぎやの小説・ひとまず投稿⑩  ・・・実は、ドラマの脚本が決まっている。劇団の方は、なんとか、メンバーに任せて、公演を回していたが、その他のこともあり、その仕事がずれ込んでいた。もう、手がいっぱいだぁ・・・。  諸島部から、故郷の中央部に戻ってきていた萩。拠点はいくつかある。はっきり言うと、その実、いざという時、テレビ局や、その他、関係者から、逃げる為にそうしている。  自転車で、食糧を買い出しに、コンビニに行こうとしたまでは良か

「樋水の流布」 第一話

 当時、私は、まだ、大学の文学部に通い、作家志望だった。竜ヶ崎淳三郎先生が好きで、作品は全て、読破していた。出会ったのは、中学生の頃で、歴史小説の大家である先生の、畸神に関する伝説の小説は、常に、私の心を捉えて、躍らせた。  学校の勉強は、その為、国語と古文、各国の歴史などの、いわゆる文系科目は、それぞれの学年で、トップクラスを納めていたが、それ以外は、からっきしだった。高校の時、文芸部に所属し、自分なりに、畸神をテーマにした小説を、書き始めてはいた。その作品を読まれ、顧問

「樋水の流布」 第二話

「・・・というわけなの」 「そうなんだ・・・芸術家って、変態が多いから、多分」 「えー、そんな、はっきり言うの?」 「もう、行かないで。作家なんて、病んでおかしくなる。一握りの才能の為のものだよ」 「先輩、・・・そうなっちゃうの?前向きに、相談してんだけど・・・」 「そんなの、一本釣りの意味が違う。次、そこ書かせて、そのまま、連れ込まれるだけだよ」  えー、そんなわけない。違う。だって、論文のこと、天照のことから見たら、ただのセクハラとかじゃないよ。  先輩だって、竜ヶ崎

「樋水の流布」 第三話

 大学の三年生から、私は、竜ヶ崎先生の竜舌庵に移り住むことになった。条件としては、大学には、そのまま、きちっと通い続け、必ず、卒業すること。門下生として、必要な家の中の仕事は、全て取り組みながら、覚えていくこと。そんなわけで、家の仕事は、人数割りなので、私が入ることで、今後は、一人頭が、楽になるそうだ。  その前に、私は、先生から「書庫の掃除」を仰せ遣っている。それが済むまでは、それが仕事として、優先となる。大学と、その作業が、中心の生活が始まった。その実、学校は通いが、少

「樋水の流布」 第四話

先生が退室されると、彼は、座り直して、初めて、私と目を合わせた。 「どうかな?流行りの店で、スーツを誂えたんだ。似合うだろう?」 「うん、カッコいいね。スタイルいいから、似合うよ。モデルみたいだね。イケメンで」 「・・・はあ、心の込もっていない言い方だなあ・・・そういう風に、淡々と言うんだ・・・前々から、思っていたんだ。相変わらずなんだ、流布は・・・」 「・・・そんなことないです」 「先生とは、どうなの?」 「先生と弟子ですよ。・・・それ以上も、以下もありません」 「まあ、

「樋水の流布」 第五話

 そんなこんな、しているうちに、私は、十倉坂大学の文学部を卒業した。卒論は、勿論、竜ヶ崎先生について、その魅力を考察したものだった。これも、レビューに違いない。お蔭様で、優秀な成績、に近いもので、卒業することができた。  その卒論だが、かなり、気合を入れることができた。これこそ、先生のことながら、お伺いを立てるわけにいかなかったが、卒業論文集では、巻頭に載せられてしまい、自然と、竜ヶ崎先生の手元に行く。 「レビューの方もそうでしたが、これも有り難い、嬉しいものです。こんな