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守護の熱 第一章 (第二十三話まで)✒

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天体写真が趣味。生真面目で、正義漢。将来は、弁護士になるのが夢。 長箕沢という田舎町を舞台に、主人公の雅弥の日常に、様々な出来事が。 あることをきっかけに、雅弥は、その使命『守護…
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星空を逃して ~守護の熱 第一話

 今夜も冷えるな。そろそろ、帰るか。もうすぐ、夜が明ける。 「今度、あったかい飲み物とかさ、毛布とか、持って来ようよ」 「そうだなあ、これから、冷えるもんな」 「これ、放置して、帰れないの?」 「カメラが倒れたり、盗まれたりしたら、終わりだからな」 「あああ、寒い、まぁや、ちょっと、ダメだ、もう、歯の根が合わない、ううう」  北極星を中心とした、星の動きを撮影する。この位置がいいんだ。小高い山の中腹に当たる丘の上に当たるのと、天空を遮るものが、何一つない場所。俺は、ここを

守護の目覚め③ ~守護の熱 第十三話

「今日は、撮りたかった星の配置になっていて、絶好のチャンスだから、・・・多分、粘って、撮影してくるつもりだから」 「いいじゃない、お誕生日記念ね、お祝いは、次のお休みにするから、鷹彦さんが戻ってる時がいいと、お父さんも仰ってたし」 「ああ、それなら、ありがたい」 「心置きなくね、良い写真、撮ってらっしゃいね」  明海さんに、朝、こう伝えて、出てきた。フェイクというわけでもないが、カメラもバックに忍ばせた。後、例の封筒も、綺麗なやつに変えて、持っていくことにした。  要は、

星の展示会に向けて         ~守護の熱 第十五話

 毎年、六月末に、恒例の長箕沢地区を上げての文化事業交流会が行われている。町おこし事業の一貫らしい。今年も、その準備の時期に入った。地域の高校も、事業所の一つとして扱われて、参加することになっている。商工業系の学校は、その特出する技能を披露したり、農業なら農作物の販売をしたりするので、必ず参加している。普通科の学校は、数校ずつ、回り持ちで、文化祭的な形でブースを出展する。場合によっては、私立の系列は、数校で一つのものを出す場合があったり、部活動が優秀であれば、そのような形での

それぞれの② ~守護の熱 第十七話

 発表会は滞りなく終了した。評判も良く、チームは、両方の学校代表として、県からも表彰された。甘木先生も大喜びで、理科の研究発表として、資料を学校に寄贈することになり、何枚かは、理科室に展示されることとなった。長箕女子の方にも、同様に写真を寄贈することとなった。また、噂に尾ひれがつきそうだが、もしそうなってもいいと、気にしないことにした。  休み時間に、八倉がメンバーを呼び止めて、今回の打ち上げをやろうという話が出ていると伝えてきた。 八倉「露原さんたちがやりたいと言ってい

彼女の豹変(八倉視点)  ~守護の熱 第十九話

「それで、何かな?個人的なことって・・・」  実紅ちゃんが、改めて、聞いてきた。少し考えた。辻とのこと、言いたくないだろうけど、本当のこと、聞いて、それから・・・。 「ああ、言いづらいかもしれないけど・・・」 「・・・」 「結局、色々、噂を聞いてて、大丈夫なのかな、って。・・・辻とのことは」 「・・・好きだよ」 「あ・・・」 「実紅は、雅弥君が好き」 「付き合ってる、とかって?」 「・・・今、辻君、忙しいから、もう少しして、大学とか決まったら、もう1回、話すの」 「そうな

逢いに来た 守護の熱 第二十三話   第一章 最終話

 こないだの時・・・、初めて、そうなった日は、帰った後、慌ただしかった。誕生日だったから、泰彦が、玄関で待っていて、プレゼントをくれて、一緒に風呂に入った。余計なこと、考える暇もなくて、良かったような気がしたが、布団に入ると、不思議な感覚になった。  人の家の布団に寝る、・・・というか、あれは、なんだろう。場所を使うっていう感じだから、ちょっと、違ったのかもしれないが・・・。あの晩は、いつもなら、すぐ眠れるのが、やはり、少し時間がかかった。隣に、清乃がいたら、と、つい、考え