ぼくの旅
1.コーヒーを飲んで目が覚めた。深夜起きてしまったときのようだ。暗い深海に届くわずかな光。鯨が横切っていく。あるいは夜を走る電車。窓からぽつんぽつんと見える明かり。どこへ行くかもわからないまま、電車は走り続ける。
2.砂漠に着いた。風がびゅうびゅう吹いている。雲がどんどん流れていく。明日はどこで目を覚ますのだろう。
3.高原のホテルで目を覚ました。朝食を食べにホールへ。皆、どこから来た人々なのだろう。似たような服を着て、似たような話をしている。ぼくだけ部外者のようだ。朝食はおいしかった。見たことのない料理だったけれど。
チェックアウトして、草原を歩いた。ヤギがぼんやりとした目でこちらを見つめていた。
4.旅の途中で老人と出会った。
「あんた、どこへ行きなさる」
あてはないと言うと、そうか、と言って飴をくれた。食べるとシュワシュワ。心フワフワ。ひたすら歩き続けた(街に着いた)。
5.寝ぼけまなこで街を歩く。霧の記憶に誤作動中。走り出す朝に海を見つめ、何か教えてもらおうとしている。会話がかいわれ大根のようにスーパーに並んでいる。そのうちの一つを手に取り、レジに持っていっておばさんに話しかける、(これください)。
6.ジャングルの迷路。自分がどこにいるのかわからない。奇怪な植物が話しかける。
「どこへ行くんですか?」
どこだったかねえ…。太鼓の音がする。人が近くにいるようだ。風が彼を連れてくるようだ。太鼓鳴らす人。それを聞く人。夜がやってくる。
7.寒い街に着いた。サーカスを見る。火の輪くぐりに言葉失ってしまいそう。モーターカーの夢の先に沈んでいくぼくら。ティースプーン一杯分の夢を見る。北の空で見つめる星。まぶたが凍りつく、白い白い日。オーロラが揺れている。何者かの夜の行進を、聞いていた。
8.旅を終えて、家で眠った。深い眠り。夢を見ていた。道化師がオーロラの下、踊り続けていた…。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?