Alan Wake 2 クリア感想【※ネタバレしかないので、プレイ後推奨】


結論

まずは前作をやってくれ。
ついでにCONTROLをやってくれ。DLCもやってくれ。今ならDLC全部入りのアルティメット・エディションが出ている。
今作はこれらを全て履修していないと話が見えてこないんだ。マジで。

Alan Wake Remastered (Epic Games)

https://store.epicgames.com/ja/p/alan-wake-remastered

Alan Wake (Steam)

CONTROL Ultimate Edition


キャラ所感

全キャラ書いてたらキリがないので、あくまで現時点で思うところがあったキャラだけとする。

サーガ・アンダーソン

  • 新主人公。実はQuantum Breakの時点でチラッと名前だけあったらしい。マジ?

  • Poets of the fall 扮するメタルバンド、Old Gods of Asgard のメンバー、トール・アンダーソンの孫娘。アランの書いた創作によって生えてきたキャラかと思ったが、どうもアンダーソン一族は創作による現実改変にある程度の耐性があるらしく、たぶん本当の孫娘。

  • 精神世界という特殊能力を持つ。「エリート捜査官の思考整理術を可視化したものやろな」と最初は思わせつつ、プロファイリングと称してその場にいたりいなかったりする人物と交信し、推理ではたどり着けないであろう情報を引き出すなど、ただの思考整理では説明のつかない一種の異能であると判明する。終盤のシーンはCONTROLのあるシーンを彷彿とさせる。これについては後述する。

  • 英語版wikiの情報によると、「Saga」は北欧神話においては「先見者」「見ること」を意味し、死者との会話ができるものを指す、とのこと。また、英単語としてのSagaは物語の一つであり、「古ノルド語、古アイスランド語の中世の散文叙事詩」と定義されている。物語の現実化がストーリーの中核であるアラン・ウェイクシリーズにおいて、まさにジャストな名前だ。QBで先出ししても後から変更することはない名前だったのだろう。トール、オーディン、母のフレイヤなど、血族に北欧神話からの引用が多いなか、神の名としては聞き覚えがないな……?と思ったが、なるほど。

  • とすると、娘のローガンにもなにかしら意味が……?と思って情報検索してみたが、今のところヒットなし。比較的ありふれた名前だ。Remedyとしても、流石に娘の代まで闇と戦う宿命を背負わせるつもりはないのだろう。バイオハザードじゃないんだから。

アラン・ウェイク

  • シリーズお馴染み主人公。なんと13年間も闇の世界に閉じ込められ、缶詰になって新作を書いたり、書いたことを忘れたりしている。2年のスランプの気分転換のつもりで訪れた旅行先で13(+X)年も閉じ込められるとはお釈迦様も思うまい。

  • NY在住、行く先々でサインを迫られるようなベストセラー作家(2010年の話)という設定までは羨ましがる物書きも多かろうが、流石にこんな目にはあいたくないと思う。こんな浦島太郎は嫌だ。

  • トイレとか飯とかどうも必要なさそうな闇の世界でもバッチリ13年分年をとっていた。まあ中の人が実在するからね。ヒゲも髪も伸び放題だが、実際に13年間放置してたらこんなもんじゃ済まない気がする。まあそこはそれ。役作りにも限界はある。

  • 日本人が着るとどうも野暮ったくなりがちな印象のあるエルボーパッチつきのジャケットは健在だが、前作のフードパーカーはどこへやら、シュッとしたシャツ&ネクタイスタイルに。いいセンスだ。

  • 前作ではミュージカルなどやりそうもない切羽詰まった感じ(妻を誘拐されたと思わされたりしていたので仕方なし)だが、今作の実写パートでは歌って踊る。正確には歌って踊る自分の映像を見せつけられている。プレイヤー的にはOld gods of Asgardの曲がかっこいいので無問題だが、本人の心中や如何に。戦闘パートだからそれどころじゃないか。

  • ちなみにこの歌って踊る曲で言及された「Champion of Light」というのがアランの代名詞らしい。ゲームでは光の戦士と翻訳されてる。つまりヒカセンじゃん(違う)

  • 戦闘能力は前作からさほど変わっていない(というかゲームシステムがガッツリとサバイバルホラーの文脈に寄ったので、前作より弱くなってる気さえする)が、行く先々の空間を執筆部屋のタイプライターで改変したり、スクラッチが迫る中、急ピッチでエンディングを書き足したり、作家としての技量をいかんなく発揮した。伊達に13年も缶詰されてない。

  • ウェイクさん!FBCと局長のジェシーの存在について一言コメントお願いします!……ウェイクさん!?ウェイクさーん!?(唐突なパパラッチ)

  • 「代償を払う」という言葉の通り、サーガに光の弾でスクラッチごと眉間を撃ち抜かれ、そのまま死亡したかと思いきや、死亡リトライ時のように再び目を覚ます。流石に主人公死亡エンドはバッドすぎるし、逆に釣り合い取れないか。闇の世界に再び囚われるというのが代償の本来意味するところだろう。

  • そして前作の「湖ではない、海だ」に続き、「ループではない、螺旋だ」で物語は終わる。これけっこう汎用性の高い構文だな。クリア者の間で擦られそう。

アレックス・ケイシー

  • アラン・ウェイクの人気シリーズの主人公……と同姓同名の人物。FBI捜査官。サーガの相棒。現実改変の影響か不明だが、どうも作品にそっくりな捜査官人生を送っていたらしい。CONTROLの資料にも名前が出ていたとか。

  • メタな話をするとRemedyが権利を明け渡してしまったMax Payneをオマージュしたキャラ。

  • アランとしても創作のキャラのイメージぴったりの外見だったようで、闇の世界では同じ俳優が創作のアレックス・ケイシーとして出演する。そちらではシリーズ最終作のSudden Stopの展開をなぞるように死亡し、アランに拳銃とライトのセットを明け渡す役となる。

  • ではアランの創作によって無から生えてきた人物か?というとそうでもないらしい。「完全に創作の人間ではないので、スクラッチと同化しきれない」と言っていたし、Sudden Stopの展開通りなら今頃とっくに死んでいるはず。その作品が2023年以降の話だとしたら別だが。

  • 自分と同姓同名でよく似た男が自分そっくりの人生を送っている様がベストセラー小説になり、挙句の果てには作中で死亡するなど、想像したらだいぶ気持ち悪くて嫌だと思う。よく平気でFBI捜査官やってたな。

ティム・ブレーカーとミスタードア (ワーリン・ドア)

  • ティムは前作に登場した保安官サラ・ブレーカーの従兄弟。中の人はQuantum Breakの主人公ジャック・ジョイスを務めていたショーン・アシュモア。道理で見覚えのある顔だと思った。

  • ミスタードアはCONTROLの主人公、ジェシーの弟ディランの見た夢に登場した人物だそうだ。これもQBのマーティン・ハッチを彷彿とさせる立ち位置。というか同一人物かもしれない。「次元の間を移動している」とのことなので。

  • 「MartinとWarlinって綴りが似てるよね」などのトリビアが英語wikiにある。確かにそう。

  • ハッチ役のランス・レディックが亡くなってしまったためか、デヴィッド・ヘアウッドが務める。「黒幕っぽい底知れなさを持つ、スーツにメガネ姿の謎のアフリカ系男性」というキャライメージはしっかり引き継いでいる。

  • そしてなんと、サーガの父親。母方が北欧系ルーツなのにサーガと娘のローガンがアフリカ系の顔立ちだったのはそのせい。翻訳の質がアレで、日本語吹き替えでは父親についてトールに問うてもはぐらかされたような返答だったが、英語ではちゃんと言ってるらしい。ローカライズくんさぁ……

  • 上述のハッチと同一人物説が正しいか、もしくはRemedy Connected Universeにおける同等の厄介な存在だとすると、サーガは自分が想像している以上に色んなものを背負っている。
    ……というかだいぶアフリカ系の血が濃いな。現実もこんなもん?

  • 結局この二人の話が作中で完結することはなかった。DLCで語られるだろうか?

Old Gods of Asgard

  • シリーズお馴染みのヘビメタバンド。こちらの世界においてはPoets of the fallがRemedy作品に専用の楽曲を提供する際の別名義と考えてよい。Remedy作品の世界においては実在するバンド。作中主要人物にファンが多く、CONTROLの主人公ジェシーもファン。

  • 作中の展開を示唆するような歌詞の曲を書くことで有名。この世界では音楽もコールドロンレイクの手にかかれば現実改変の道具になるので、これがその手のものなのか、インスピレーションによる一種の予知なのか、それとも米津玄師めいて解像度が高すぎる楽曲提供の結果なのか。公式設定を把握しきれてないので、答えは読み手に委ねる。

  • 今作でもマジでいい曲を書いてくれている。ミスタードア、アラン・ウェイクも共演するシリーズ最長の曲「Herald of Darkness」に、ストレンジャー・シングスのシーズン4を想起させるシーンにおいて流れる「Dark Ocean Summoning」どちらもマジでいい。配信されたら聴いてくれ。いやプレイして聴いてくれ。

  • RemedyとPoets of the fallの関係は新海誠とRADWINPSだと思っておけばよい。

  • ちなみにRemedy作品の世界にPoes of the fall自体も存在する。双方のファンの間で「似てる」「ぶっちゃけパクリ」「いやぜんぜん似てへんが????」の応酬が今日も繰り広げられてそう。

シンシア・ウィーバーとパット・メイン

  • おそらく前作プレイヤーが精神的にきつかった描写として一・二を争うと思う。13年の歳月は残酷であった。

  • シンシア・ウィーバーは前作におけるランプおばさん。前作の初対面では暗所恐怖症の変人のような印象を与えたが、Old Gods of Asgardの曲「The Poet and the Muse」の歌詞に登場する「The Lady of the Light」とされる重要な役どころであった。

  • そんな頼もしかった彼女も13年の時を経て耄碌し、老人ホームに入り、そしてローズにトーマス・ゼイン形見のランプを盗まれるなど様々な不幸が重なり、闇に完全に飲まれてしまった。物語力を使い切ってしまったキャラの退場シーンはいつ見ても切ない。

  • パット・メインはブライトフォールズの地元ラジオ曲KBF-FMのDJを務めていた男性。シンシアと同じく老人ホームに入り、そこで「パット・メインのラジオ番組」として個人で放送を続けていた。

  • 日本語版声優の辻親八氏の「アメリカの田舎のラジオにありそう」感の溢れたアットホームな語り口に懐かしさを覚えたファンも多いだろう。「ああ、ブライトフォールズに帰ってきたんだ」と。

  • しかし時は残酷であった。彼も今はある程度正常に会話ができるものの、認知症の症状が出始めており、数年前に亡くなったはずの女性のことを番組でいつまでも擦っては遺族や友人らにひんしゅくを買ってしまっていた。

  • 「私はおかしくなっていない。みんな私をからかっているのだ」というスタンスで終始亡くなったウェンディ・デイビスを擦り続ける姿は、現在進行系で物語の力によって死んだことにされかかっているローガンの生存を信じるサーガの姿と重なるところがあった。サーガ本人もそう思っていたのか、老人ホームで本人と対面したときにあなたの番組のファンだとコメントしていた。

  • しかし、ローガンと違ってウェンディ・デイビスはおそらく本当に亡くなっているのだろう。闇の存在にとって、彼女を死んだことにするメリットがこれといってないからだ。

  • 現実でも長編シリーズの続きを待ち望んでいるうちに亡くなってしまったオタクの同志をSNSで目にすることが珍しくない。老いや死というものは、わざわざホラー小説の文脈で語るまでもなく身近で、そしてしんどいものだ。



アーティ

  • CONTROLで休暇に出たと思ったらちゃっかりブライトフォールズに住み着いていた。老人ホームの執筆部屋の前に居を構え、ウォータリーではのど自慢を披露していたフリーダムな掃除のおじいさん。いやマジで何?

  • CONTROLでもヒスの脅威を意に介さずあちらこちらで登場してはジェシーを導いていたが、今作でも闇の影響を一切受けず、闇の世界と現世を行き来して二人を導いた。明らかに他の存在より「格」が数段上の描写をされている。

  • フィンランド神話に登場するアーティそのものが人の姿を借りて闇との戦いにおける導き手をしていると考えるのが現状もっとも自然。CONTROLの頃はオールデスト・ハウスの意志の具現とされる説も存在したが、東海岸を遠く離れ、カナダのバンクーバーにほど近いワシントン州のブライトフォールズでもなんら問題なく行動できており、土着の存在にしてはフッ軽すぎるのがその根拠。だが、NYのオールデスト・ハウスの管理人というのもウソではないはず。神話的関連性についてどこかで説明できる資料があっただろうか……。

闇、再考

なんとなくAmazarashiっぽいタイトルをつけたが、特にそちらに言及するような話にはならないはず。
まあでもここまで大きく擦った以上、こちらも載せておくのが礼儀か。これもいい曲だ。

https://youtu.be/LRs2peRAyC8?si=dQh6OG9kAR41nEOG


前作Alan Wake、CONTROLのDLC『AWE』、そして今作とRemedy Connected Universe三作を通して対峙したコールドロンレイクに住まう闇の存在。その正体について、考察……は今更だし、正直そういうのは考察動画でも見たほうが早い。
なので、自分の考えを整理しようと思う。
闇の存在について、まず公式設定として分かっていることを列挙する。

  • コールドロンレイクに潜む「何か」

  • 触れると理性を失い、行動を支配される(前作のローズなど)

  • 侵食が重度になると異能を行使できるようになるが、元に戻せなくなり、人間としては完全に死亡する

  • 光が弱点

これが共通する性質。

スクラッチ

新曲のタイトルにあった「Herald of Darkness」とはこいつのこと。これ邦訳なんだっけ?手元に確認できそうなセーブデータがないので、直訳して「闇の先触れ」としておく。
ゲーム的にはこいつだけ普通のライトでは追い払うことができず、クリッカー、または連邦操作局(FBC)謹製の専用設備でのみ、取り憑いた肉体から祓うことができる。
前作では老婆となったバーバラ・ジャガーの姿をした存在が「闇の先触れ」であり、ラストでそれが打ち破られた後、アランの反存在として発生したのがスクラッチだ。

Scratchという単語は「書き間違いなどの抹消」の意味で用いることがある。「ミスター・スクラッチ」はつまり「アランの書いた原稿から闇に都合の悪い部分を抹消してやる」という意味合いも込めていたのだろう。

前作のバーバラと比較して、物語を利用し、都合のいい方に誘導するやり口が非常に上手くなっていた。サーガとアランの境界域での交信の時系列のズレ、アランを現世に召喚する儀式と召喚される時系列のズレさえ利用し、保険としてケイシーを用意する周到さでもって一度はサーガとアランを見事に出し抜き、クリッカーを奪取。リターンのエンディング「広がり続けるディアフェスト」を現実として世界の侵食にかかるも、アランによってエンディングを書き足され、あえなく敗北。
光の弾でアランごとヘッドショットされたが、本当に消滅したのだろうか?
消滅したのだとしたら、次の先触れは一体誰をモデルとした存在になるのか?

やり口が上手くなった理由は、スクラッチがアランをベースとして生まれた存在だからであろう。アランが元々持っていた攻撃性(実際、前作ではベストセラー作家時代の破天荒エピソードは資料の随所に存在したし、相手にも非があるものの保安官事務所で暴力を振るうなど、わりと喧嘩っ早いところがあった)を誇張しつつも、作家として物語を利用する賢さを持っている。彼が後に認めたように、「もう一人のアラン」なのだ。

もう一人のサーガ

「ローガンは死んだ。ケイシーは救えない」という闇が望んだ現実をサーガに呑ませ、事象を確定させるために作り上げられた存在。とにかくなんでも自分のせいだと思い込む自罰感情の化身として、サーガの認識を塗り替えるべく自分を責め立てていた。攻撃性がひたすら自分に向いているところが外に向いていたスクラッチと対照的だ。
サーガの特殊能力は精神世界で、これが生来の気質を多少なりとも反映したものだとすると、元々少し内向的であったのだと考えられる。FBI捜査官としてはそれが思慮深さ、洞察力に直結し、美点となっていた。それをスクラッチ同様に悪い方向に誇張したのだろう。

スクラッチによってコールドロンレイクに投げ込まれたサーガの精神世界を侵食し、部屋にあるありとあらゆるものをサーガを苛むための道具として利用した。
サーガはそれに対し、一つ一つ闇に押し付けられ、歪んだ認知を取り払い、精神世界を正常化させていった。
CONTROLのプレイヤーにはこれと重なるシーンがあったはずだ。
「局長になり、自分を見捨てた(と思い込んでいる)姉のジェシーをコキ使っているディランの夢が現実になった、もしもの世界」から主導権を取り戻した(Take Controlした)あのシーンである。
ヒスが「リターン」に登場するダダイズムの詩に端を発する存在であり、かつリターンには闇の存在の手が及んでいることから、おそらくこれが闇の存在が洗脳するときの常套手段なのだろう。



この「歪んだ認知を取り払い、自尊心を取り戻す」という一連の流れは認知療法を経験した者には覚えがあるはずだ。つまり、これらはうつ病、抑うつ症状の克服のメタファーでもあると私は思っている。
憂鬱という身近な恐怖に対峙し、身近な人との繋がりを思い出し、以てそれに打ち克つ。アランとはまた違ったヒーロー像を彼女はこの一作で示した。
そしてアラン・ウェイクの物語にサーガ・アンダーソンという新たなヒーローの視点が加わり、物語は一つ上の次元に、平面から三次元になった。平面の視点ではループに見えていたものが、三次元の視点で螺旋になって見えるようになったのだ。

次の先触れは誰?

これはほぼ霊感、妄想に近い予想だが、アランの妻、アリス・ウェイクなのではないかと思う。
キャラ所感で語るべきだったかもしれないが、CONTROLの「AWE」にて行われた取り調べの後、彼女も前作で起こったことすべてを思い出し、アランを救うべく闇の世界に戻った。そして、電話を通してサーガを導き、クリッカーとヒントを与え、スクラッチを倒す光明となった。

だが、今作で大団円を迎えられなかったように、物語は常にバランスを取ろうとする。スクラッチに続く第二のヴィランとしての「もう一人のサーガ」はサーガに敗北した。なら、第三の(影の)ヒーローとなったアリスに対するヴィランを用意するのが筋ではないか、と思った訳だ。

Alan Wakeに正式に合流していないもう一人のヒーローとしてCONTROLの主人公、ジェシー・フェイデンがいるが、彼女にスクラッチのような反存在をすぐに用意するのは難しいように思う。闇サイドとしても裡にポラリスを宿し、AWEにてハートマンを破るほど手強かった彼女に手を出すより、まず懐に潜り込んできたアリスをコピーしたほうが手っ取り早かろう。
だがもしジェシーの反存在が今後生まれ、戦闘能力もオリジナルそっくりだとしたら、いまだかつてない難敵になるだろう。

ゲームとしての感想

今作では完全に「肩越しカメラのサバイバルホラー」にガッツリと寄った作りになっている。方向性としてはバイオハザード ヴィレッジのTPSモードを参考にしたのではないか。
前作やCONTROLのようにFOV広めのTPSではなくなり、回避の判定、弾薬の補給、敵の強さなど、前作よりシビアなバランスになった。
戦闘の緊迫感の演出については目的を達成しているといえるが、敵のほうがプレイヤーより機敏で戦闘回避が難しく、探索をすればするほど弾薬を消費してジリ貧になってしまうデザインと、隠し物資などを探索させるコンプリート要素がうまく噛み合っていないように感じた。

また、機動性はもうちょっと上げても良かったと思う。探索パートで頻繁に歩き回らされるのに対し、便利なファストトラベルなどもない(よね?見落としてないよね?)ため、業界的に見てもあまり早くない速度で走るキャラクターの後ろ姿を長いこと見続けることになる。
他にもパフォーマンス面の感想として、推奨環境をクリアした状態でプレイしているが、それでもけっこう処理が重く、死亡リトライ時のロード時間もそれなりに長い。

ローカライズについても、字幕のタイミング改善も単純にディレイを追加しただけのようで、抜本的なタイミング調整が行われてたとは言い難い。吹き替えが適切に再生されず、唐突に英語を喋りだす問題も完全に直ってはいない。継続的なアップデートでなんとかしてほしいところ。

最後にバグについて。コレを書いている11/3時点では重大な進行不能バグは概ね解消されているようだが、私が発売当日からプレイして、実際に直面した進行不能バグと、それが原因でエンディングの到達が遅れたことはおそらく忘れられないだろう。13年ぶりの新作で、この手の最優先で潰しておくべきバグが残った状態でリリースされたのは残念だ。
だが、それでもアンチに転ずるほど嫌いにはなれなかった。嫌いになったなら、ウダウダとこんな文章を書いてはいない。
DLCが出るタイミングなら流石に主要なバグや字幕・吹き替えの品質向上も一段落しているだろう。その頃には素直に勧められるゲームになっていることを願う。

エンディングの曲がマジでエモかったという話

ここまで読んでネタバレもなにもないだろう。前作のWarに続き、タイアップ曲としてPoets of the fallが去年にリリースした「Heroes and Villains」がエンディングテーマに選ばれた。


"To lift me up to new heights"
"And who will pay the price, the lost or the damned"
"We are heroes or villains (by chance)"
"We are heroes or villains (by choice)"

ここらが日本人の私にも理解しやすいところで、本作の解像度を上げてくれる歌詞だと思う。
ループから上昇し、螺旋とせよ。
ヒーローが代償を払わねばならない。
そして、ヒーローとヴィランは物語の都合で決められる、偶然(by chance)なものであるのと同時に、闇に屈するか打ち克つかの選択肢が等しく与えられたとき、自らの手で選び取る(by choice)ものでもある。

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