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生長マインド:定義と概要

臨床研究を行っていく上で、・・・いえいえ、言い過ぎではなく人生全般の活動、そのすべての源となるものがあります。
それが、『生長マインド』です。
これ以外のものは、すべて枝葉に過ぎません。
逆にいえば、生長マインドさえあれば、そのほかのすべてはついて来ます。
そして、その生長マインドの本質こそが、≒ 臨床研究の本質につながります。
そんな、とってもとっても大切な、生長マインドについてまとめます。
第1弾の今回は、生長マインドの定義と概要を示します。

■ 生長マインドの定義

生長マインドの前に、まず、生長とは何かを定義します。

生長とは、「今の自分と次の自分との変化量」です。

例. 昨日は歩けなかった赤ちゃんが、今日歩けるようになった
▶︎ 「歩けるようになった」という生長

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そして、もう1つ。生長力というパラメータがあります。

生長力とは、「生長を生み出す力」です。

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ではいよいよ、生長マインドとは何か?

生長マインドとは、「自らの生長を信じきる心」です。

例. いまは全然できないけれど、きっと、自転車に乗れるようになる!

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生長マインドと真逆の心として、『硬直マインド』があります。

例1. 自分には自転車に乗ることなんて絶対できない!
例2. 自分もそつなく仕事ができるようになってきたから、このままでいいかな
例3. 俺は、このチームでは一番上手だし、もう完璧だから、練習する必要はない

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■ 生長力を構成する2つ要素は、生長マインドがなければ回転しえない

ものすごく大づかみに、生長は①発見②実行(実際の練習や実験・研究)から構成されます。

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発見とは、今の自分以上のものを探す心の営み、興味のことです。

例. 打てないスランプに陥っている野球選手
【硬直マインド】今のスイング以上の振り方を探し求めない。いまの自分が変化できることを信じる生長マインドがないということは、今の自分以上のものを探す興味は起こりえない。
【生長マインド】次の瞬間自分が変わっていける・生長できることを信じるから、「こう振ったら、どうかな?」という興味が湧き、明確な課題を「発見」できる。

実行とは、発見で見つかった仮説を、実行によって、試す・磨くことです。

例. 打てないスランプに陥っている野球選手
【硬直マインド】仮に新たなスイングの形を思いついたとしても、それをやったところで「自分は変わらない・変われない・変わる必要がない」と信じているため、頑張る気が起こらない。
【生長マインド】発見された「こう振ったらどうかな?」を四六時中試す、家に帰ってからも素振りする。そうして試していった結果、最初のアイデアがさらに錬磨され、打率3割を超えた。

簡単にまとめます。

生長できると信じるから、のめり込める、頑張れるわけで、「これをやってもなんの足しにもならんけれども、メッチャ頑張りまーす!」っていう人は、いないか、ネジが飛んでいます。
「お金もらえるから、メッチャ頑張りまーす」はありえますが、このような外来的な動機付けでは「方法自体の洗練化」は起こりにくいことが明らかになっています (【市川伸一】学ぶ意欲の心理学)。
思い出してください、僕たちが転んでも転んでも自転車の練習を続けたのは、「自転車に乗れるようになった自分」を信じたからでしょう。
部活動で一生懸命やったあの練習は、「もっと上手くなった自分」を信じたからでしょう。
とくに、実行には莫大な労力が必要であり、それを捻出できるのは生長マインドなのです。
生長マインドは、生長力を生み出す2つの歯車を回すためのエネルギー源です。

■ 生長マインドがあるから、臨床研究ができる!

個人がもっている知識のことを、「個人的知識」と呼びます。
そして、みんなが共有している知識のことを、「学術体系」と呼びましょう。
臨床研究とは何かを一言で表せば、それは、『学術体系の生長』です。

個人が今まで分からなかったことを解決できたとしたら、それは、個人の生長です。それと同じことが学術体系にも言えるのです。学術体系にとっての未知が解決できたとしたら、それは、学術体系の生長です。

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すなわち、生長マインドをもたない者は、臨床研究に参加できません、参加しても役立ちません。
なぜなら、その人には発見、実行という歯車が回すことができないから。
その歯車を回すことができなければ、個人的生長はなく、その集合知である学術体系の生長もあり得ません。
それが故に、生長マインドは、臨床研究におけるすべての根幹であり、源なのです。

■ 大丈夫、生長マインドは性善説です!

「ちょっと待って!わたくし、完全に硬直マインドの申し子でございますが・・・。」という方、ご安心ください。
あなたは、いま、生長マインドをもっています!

生長マインドは、全員に、生まれつき備わっている

僕はそう信じます。

だって、そうでしょう!
みなさん、子どものとき、なんでもやってみたいと思っていたでしょう!たとえ、それが失敗して膝擦りむいても、次の瞬間、笑って走り出していたでしょう!
子どもは、「これをやったら、どうなるのかな?」という好奇心と生長したい気持ちが、大人に対して圧倒的に強いように見えます。これは、いうなれば『生長マインド』という本能に対する抑制が弱い状態です。
だからこそ、ブレーキ役としての大人の存在が必要になるのでしょうし、それが効きすぎると硬直マインドに転心していくことになるのです(詳細は第2、第3弾)。

安心してください。

生長マインドは得るものではなく、思い出すものなのです。

阻害因子が取り除かれれば、自然と発露する心です。

■ 生長マインドは、信用ではなくて信頼です

信用信頼という言葉があります。

信用:条件つきの「信」
例. 銀行でお金を借りようとしたとき、なにかしらの担保が必要になる。銀行は、その担保の価値に対して「それではこれだけお貸ししましょう」と、貸し出し金額を算出する。「あなたが返済してくれるのなら貸す」「あなたが返済可能な分だけ貸す」という態度は、信用。
信頼:無条件の「信」
例. だれかを信じるときに、いっさいの条件をつけないこと。たとえ信用に足るだけの客観的根拠がなくても、信じきる態度。
【岸見一郎 & 古賀史健】嫌われる勇気

生長マインドは、信用(過去の実績に基づいた分析的なもの)ではなく、信頼(無条件に信じる明るい未来)です。いまは何ももっていなくても、何者でもなくても、生長を無条件に信頼する心、それが生長マインドです。

「自分には何もないから・・・。自分なんて・・・。自分は完璧だから・・・」

これら硬直マインドの態度に共通することは、過去の実績に基づいていまの自分に対する「信」を分析的に決定しようとしていることです。子どもの生長マインドが圧倒的に強く見えるのは、子どもが分析しうる過去を持ち合わせていないことに起因するのかもしれません。

信用と信頼の違いを明確に理解し、自分自身の生長を「信頼」してみましょう。

次回 ▶︎ 生長マインド:2つのマインドドメイン