★56 雪蓮花
少し戻って、戚容が安楽王の死について話す場面。
「五臓六腑は鋭い剣の気でずたずたになっていたが、外傷は一つも無く、吐血が止まらずに最後は死に至った。普通の剣客にこんな芸当は無理だ。永安の悪党どもの企みだと思ったが、ふん、今思えばこんなことができるのは一人しかいない。
そいつはもちろん、公明正大な素晴らしい俺の兄さまだ。
何せ俺らの花冠武神で、太子殿下、超絶清らかな天山雪蓮[てんざんせつれん]だからなあ」
日本語版原作小説には「天山雪蓮花」の説明として「中国の天山山脈に自生する花。善良な心のたとえ」とある。謝憐を讃える言葉として、過去にはよく使われていた。
雪蓮花は、中国青海・チベット・雲南などの高山に分布する高さ20cmほどの菊科多年草で、中国の「国家二級保護植物」だそうだ。「雪の中に咲く蓮の花」、極楽浄土に咲く蓮花になぞらえて、チベットのラマ教徒は「神の花」と呼んでいると聞いた。
見つけることが難しいことから百年に一度咲くという言い伝えがあったり、雄花と雌花があることから現地では恋花と呼ばれている、とか。これはネットで拾ってきた話なので真偽のほどはわからないけれど、ちょっとロマンチックなイメージのある花なのかもしれない。
雪蓮花は漢方薬としてよく知られているので、ネットで検索すると漢方薬の通信販売のページばかり出てくる。
効能は「強精」「滋養強壮」「更年期障害改善」「月経不順改善」「血流改善」「貧血改善」などだそうで、最近の報告では、記憶改善や糖尿病合併症予防、抗ガン効果も期待できるそうだ。但し後者は動物実験段階での話らしい。
とても貴重で珍しい花ではあるが、高麗人参より効果が高く、しかも即効性なので、古くは歴代皇帝のみが使用を許可されていた、とか。煎じてお茶として飲んだり、焼酎に漬け込んで錦秋色になったところを飲む、と。
で。ここからが大事なところなのだが。
おそらくこの花が、血雨探花の由来、傘で血の雨を遮ったあの花だと思われる。花城は何でもない花に傘を差しかけたのではなく、その花が謝憐を象徴する花だったので、血雨からこれを守ったのだ。
花言葉は「神聖」「清らかな心」だという。謝憐によく似合う花だ。
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