★6 守護武神と五行説
*本文を始める前に*
以下は日本語版原作小説(以下、原作と略す)三巻時点での考察なので、もしとんでもない勘違いだったら、本当にごめんなさいして、この記事を全部書き直します。ご了承ください。
南風、扶搖の二人と共にその日の宿を求め、相逢小店で、与君山のある北の地を守護する裴茗(ペイミン)を祀っている「明光(ミングァン)廟」の場所を尋ねる謝憐。
ところが店主には、「そんなものはないぞ」と言われてしまい…。
中国の小説、アニメ、ドラマ等々において、日本人(否、おそらくは中国人以外の全ての人)が最も混乱し苦労するのは、一人の人物に対して呼び名が複数あることだろう。これは名前が大抵二文字か三文字で(私は中国人から「何であなたの名前(本名)は五文字もあるんですか?」と訊かれたことがある)、しかも日本より苗字自体の種類もかなり少ないらしいので、同姓同名になる確率が高いせいだろう。
本名以外に字(あざな)があったり号(ごう)があったりで、もう誰が誰だかさっぱりわからない、となって投げ出してしまいがちだ。
そこで今回は、『天官賜福』の世界各地を守護する武神を紹介しよう。
但し以下の内、東方武神はアニメ二期にて登場、西方武神は同じく二期に名前だけちらっと出ている(戚容が天界の神官を次々罵る場面)。
・東南を守護する武神:南陽(ナンヤン)将軍=風信(フォンシン)
・西南を守護する武神:玄真(シュエンジェン)将軍=慕情(ムーチン)
・北方を守護する武神:明光(ミングァン)将軍=裴茗(ペイミン)
・東方を守護する武神:泰華(タイホワ)殿下=郎千秋(ランチェンチウ)
・西方を守護する武神:奇英(チーイン)殿下=権一真(チュエンイージェン)
真ん中の、〇〇将軍とか〇〇殿下というのが神官としての名前で、=の後にあるのが本名である。信者は皆神官としての名前を呼び、天界でも一般的にはこれを使う。ごく親しい間柄であれば本名を呼ぶ、という感じだ。
ちなみに謝憐の神官としての名前は、「仙楽太子(せんらくたいし)」。アニメ四話で菩薺観を開いた時、村人に「ここは何の神を祀ってるんだ?」と訊かれて、本人がそう答えている。原作には、謝憐の別名として「太子殿下」「花冠武神」と書かれてあるが、これは単なる呼び名だろう。君吾も「仙楽」と呼んでいる。
さて。上記の守護武神を見て、「あれ、何で五人なの?」と思わなかっただろうか。「何で南だけ二人いるの?」とか「北東や北西の武神は?」とか。
その疑問が、今回の主題である。
まず結論から言うと、おそらく五人しかいない。
作中には他にも「五師」と呼ばれる者が出てくる(アニメでの登場は「風師(フォンシー)」と「地師(ディーシー)」、名前だけ「水師(シュイシー)」が出てくるが、他に「雨師(ユーシー)」と「雷師(レイシー)」がいる)し、中国では「五」という数字に大きな意味がある。
それが「五行説」であり、万物は「木」「火」「土」「金」「水」の五つの要素が、助け合ったり抑制しあったりすることでバランスを保っている、という考え方である。
よく五行説について、「この五つが万物(宇宙)を構成する要素と考えられた」といった記述を見かけるが、これはインドやギリシャで「地」「水」「火」「風」を宇宙を構成する四元素とした考え方が後に入ってきて、これに影響された後付けの理論であるらしい。五行は「行」の字に大きな意味があって、「行く」「めぐる」、即ち五者の間の循環が本である、と。(<参考>『中国思想史』 小島祐馬 2017年(復刊) KKベストセラーズ:ここには「中国人は古来極めて実際的な実利主義に終始し、宇宙論のごとき高遠な問題には本来興味を有しない」と書かれてある。古い文献等を多数考察した結果、そのように結論づけたものだろう。)
この五者の関係性は、本来「土」を真ん中に置いて、上の「水」から時計回りに「木」「火」「金」を四方に配置する図なのだが、現代では分かりやすくするために(或いは四元素の関係図に影響を受けてか)、しばしば「五芒星」の形で表されている。
もうお分かりだろう。五芒星の尖った部分を指し示す方角でいうならば、「北」「東」「西」「東南」「西南」になるのではないだろうか。
ということで私としては、世界に地域を守護する武神は五人しかおらず、その五人は同格である、と考える。
尚、「五行説」について、特にその五者の関係性について詳しく説明しようとするととんでもなく長くなってしまうので、ここではこれ以上触れないことにする。いずれ機会があれば、ということでご理解頂きたい。
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