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紹介:『あきない世傳 金と銀』

 中華でもファンタジーでもBLでもない作品でごめんなさい。
 でも、本当に好きな作品なので、紹介してみることにした。
 江戸時代(享保〜明和)を舞台にした時代小説だが、剣豪とかは出てこない。齢九つで大阪・天満の呉服商「五鈴屋」に奉公に出た少女が、いつしか大店の女主人になっていくという物語だ。大奥のようなドロドロはない。過酷な運命と不思議な縁に導かれ、不屈の精神とその才覚で懸命に商いの道を突き進み、気がつけばそういうことになっていた、というところか。

あきない世傳 金と銀

 作者の高田郁は、映画やドラマにもなった「みおつくし料理帖」シリーズが有名だが、私はこちらのほうが好きだ。
 主人公の幸はクールビューティーという感じだけれど、色気より遥かに知恵が優っていて、商売のことを考えるのが一番興味があるらしい。その商売も「買うての幸い、売っての幸せ」を掲げて、客を筆頭に、取引先、所属する組合、町内の人々まで全てが幸せになる道を探していく姿が、眩しいほどに輝いて見える。
 柔らかくて品のある上方弁も好ましい。

 小説は十三巻+外伝二巻という長いものなので、気後れする方もおられるだろうが、とりあえず一巻を読んで、合いそうなら次に進むという形でいいだろう。
 但し私が好きなのは六巻以降、江戸への出店を決める辺りからで、ここからが幸の本領発揮である。漕ぎ出す小舟は時に流れに乗り、時に流れに翻弄されつつ、大海を目指して進んでいく。行き着く先にあるのが、江戸店開店当日の、ほんの小さな出来事との再会であるのが素晴らしい。それこそが幸や奉公人たちが目指した商いの世界であったのも。


 長いものはどうしてもダメという方には、こちらをお勧めしておこう。

銀二貫

 『銀二貫』。同じ高田郁の小説で、こちらは一巻で完結だ。「大坂天満の寒天問屋『井川屋』店主の和助は、天満宮再建のために寄進するはずだった銀二貫で仇討ちを買い、ひとりの少年の命を救う」というところから始まる物語で、果たしてこの買い物は高かったか安かったか、というのが主題である。
 多分、泣く。そしてとても幸せな気持ちになれるだろう。

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