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☆2 天界(謝憐、三度目の飛翔)

 本編のスタートは、雲の上に覗く小島のような地形の上を駆け抜けるように飛ぶ鳥の姿、更にその鳥さえ届かぬ崖の上に広がる美しい都の光景だ。

 前回から引き続きのようで申し訳ないが、この鳥は鶴、更に言えば丹頂鶴であろう。丹頂鶴は中国で「仙鶴」と呼ばれているそうだ。
 「寿星」という名の老人の姿をした、長寿を司る仙人がいるのだが、その乗り物が丹頂鶴だとされている。中国の古い絵画には仙人が鶴に乗っている図がよく描かれており、『寿星驾鹤(寿星が鶴に乗る)』と言われる絵なのだとか。
 昔、ヒマラヤを越えて渡りをする鶴を撮影した番組を観たことがある。そんなに高い場所を飛べる鶴なら、冒頭の美しい都=「天界」にも届こうかとなってもおかしなことではないだろう。

 さて、「天界」である。
 先ず、『天官賜福』の世界は、「天界」「人界(下界)」「鬼界」の三つから成り立っており、三つを合わせて「三界」と呼ばれている。
 この内「天界」は、神々が住む世界である…のだが、今我々がそう聞いてパッと想像するものとは、だいぶ事情が異なっている。第一に、神と呼ばれる彼ら(少なくとも物語の中に登場する彼ら)は、全て元人間である。人間が修練を重ねて、天の試練とも言うべき「天劫(てんごう)」を乗り越え、天に昇り(これを「飛翔」という)神と呼ばれる存在になった、という設定なのだ。
 なので、神(物語の中では「神官」と呼ばれている)は大勢いる。日本語版原作小説3巻までを見る限り、正確な人数は書かれていないが、何となく百人くらいはいそうな感じだ。そして、おしゃべり好きだったり、僻みや妬みを露わにしたり、ちょっとした事ですぐに喧嘩を始めたりなど、精神的にはあまり人間と変わらないように思える。

 そんなわけで主人公である「謝憐(シエリェン)」は、この度三度目となる飛翔を果たすという偉業を達成したにも関わらず、来た早々「最も下界へ追放させたい神官第一位」になってしまう。アニメの中では、飛翔の際、天界全体に天変地異のごとき衝撃を与え、鐘が落ち、多くの建物が崩れるなど多方面に甚大な被害をもたらしたからだと説明されていたが、それだけではないだろう。三度目の飛翔を果たしたということは、つまり以前の二回の飛翔では、天界に留まることなく追放されていた、追放されるぐらいとんでもないことをやらかした、ということだからだ。
 三度目の飛翔直後の皆の反応が、あからさまに白けた様子で、うんざりした態度を隠そうともしていないのは、そういうわけである。

 もっとも、追放される原因となった事柄に関しては、全ての者がはっきりと知っているわけではない。殊に二度目の追放となった原因について、真実を知っているのは天界の第一武神、天帝或いは神武(シェンウー)大帝と呼ばれる「君吾(ジュンウー)」だけである。
 この理由に関しては、未だ日本語版原作小説でも明かされていないため、この場でも言及しない。ともかく噂だけが蔓延し、すっかり嫌われ者となった状態で、謝憐の三度目の神官生活が始まる。

 尚、天界の都のことは「仙京」と呼ぶ。仙人が住んでいるとされる「仙郷」或いは「仙境」とは、意味も字も違うのでお間違えなく。

<追記>
 ☆5の記事を書いている途中で、天界の人数に関しての記載が日本語版原作小説に書かれているのに気がついた。
 「上天庭(自力で飛翔した神官)で百名もいない」となっているので、天界全体だと数百人くらいはいる感じか。

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