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紹介:『蒼穹の昴』・『天切り松 闇がたり』

「在ペルー日本国大使公邸占拠事件」
 1996年12月17日、在外公館の最重要行事である天皇誕生日祝賀レセプションを行っていた在ペルー日本大使公邸に、覆面姿の左翼ゲリラ、トゥパク・アマル革命運動(MRTA)メンバー14人が侵入、ペルー政府要人や日本人現地駐在員ら600人以上を人質にとった。
 その後、人質は順次解放されたが、犯人との交渉は決裂。127日後の4月22日に特殊部隊が密かに掘削を進めていたトンネルなどから進入して銃撃戦となり、MRTAは14人全員が死亡、さらに、72人に減っていた人質のうち1人が死亡、特殊部隊員2人も犠牲となった。(時事ドットコムニュースより)

 この四ヶ月以上に及ぶ緊張と疲労の拘束状態にあって、人質となった日本人たちを慰め、励まし、支え続けたのは、内の一人が持っていた『蒼穹の昴』であった。

蒼穹の昴

 ……という新聞記事を当時読み、即座に書店へ走ってこれを買った。
 清朝末期を舞台にした、実在と架空の人物が入り乱れる壮大な物語で、四巻あるそれを私は寝る間も惜しんで一気に読み、更にもう一周してからようやく少しずつ興奮が収まってくるのを感じた。
 今手元にはその本がなくて、三十年近く前の記憶だから内容は極めて曖昧だけれど、なるほどこの本に励まされるのはよくわかる、と思ったことだけはよく覚えている。

 浅田次郎っていいな、初めて読んだけど他の話も読んでみたい、と思ってそこからしばらくは彼の作品ばかりを読んでいた。
 ちなみに、読み終わった本を書棚にしまおうとして、そこに既に浅田次郎の本が一冊あるのをみつけてしまったのは、お約束である。その本は『歩兵の本領』で、自衛官の物語だから全然気づいていなかった次第。

 浅田次郎で私が一番好きなのは、『天切り松 闇がたり』シリーズだ。

天切り松 闇がたり

 所謂ピカレスク・ロマンと呼ばれる物語(短編集)で、留置場に現れた老人が昔話を語って聞かせるという形式なのだが、その昔話に登場する人物が誰も彼も格好良すぎて、気持ちどころか心臓が掴まれる。
 そもそも私は子供の頃から、シャーロック・ホームズよりアルセーヌ・ルパンが好きだったので、盗賊の話は大好物なのだ。いやあ昔の人は一本筋が通っていて気持ちいいよね。語られる江戸弁のリズムも心地良い。(あ、江戸の話じゃありません。大正ロマンあふれる帝都の物語です。)

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