「セブン」に対抗する「リトル・シングス」は2回観てしまう作品
「セブン」という映画をご存知だろうか?
あのブラッドピット主演のサスペンススリラーだ。
キリスト教の7つの大罪になぞらえた猟奇殺人を捜査していくストーリー。
20年以上も前の作品なのだが、すごく記憶に残っていて、最も印象深い作品だ。
しかし、私がこの映画を観たのは一回きり。
観終わった瞬間、2度と観ないと心に誓った。それほど怖い映画だった。
オーメンとかエクソシストとか恐怖映画と言われる作品は別に平気なのだが、「セブン」だけはごめんだ。
殺人鬼が気持ち悪すぎて、無理。ブラッドピットに共感しすぎて、心臓が壊れそうになった。
一度しか見ていないのに、いくつかのシーンがはっきりと思い出せる。特に、ラストシーンで車の窓からぼんやりとこちらを見ているブラッドピットの顔は鮮明に覚えている。
それだけの衝撃を与えられるのだから、傑作なのだろう。でも二度と観たくないと言われるのは、興行的にはどうなんだろう?
最近、映画をよく観ていて、今日は「リトル・シングス」という作品を選んだ。
観終わってから、ネットで調べると「セブン」に対抗する作品などと評価されてた。
確かに連続殺人が題材だし、デンゼルワシントン主演で、かっこよく事件を解決してくれそうな期待は持ってしまう。
ただ、デンゼルワシントンがあんまりスマートではない。正しいアメリカ人の年の取り方と言えるようなポッチャリ体型だし、過去を引きずっているのは分かるんだけど、その苦悩する表情に若き日の鋭さや色気が感じられない。
目力が減ったなあという感じ。昔はあった熱い目力が。
それで、ビジュアル担当が「ボヘミアン・ラプソディ」で主演男優賞を受賞したラミ・マレック。エリートなんだけど、義理人情に厚く、優秀だった先輩刑事の意見を素直に聞き入れる役柄。
黒人の指導者役とイケイケの若手白人刑事って組み合わせがセブンにそっくりなんだもんなあ。そりゃ比べられるだろうな。
ただ一つ違うのは、もう一度観なくてははならないというところ。「観たい」という意味ではなく。
あちこちの伏線を確認したくなる映画なのだ。悪役は絵に描いたようないやらしい性格で、主役2人を手玉に取って、憎ったらしいことこの上ない。でもセブンのように胸をかきむしる不快感はない。
悪役のセリフや映像にヒントがあって見落としたのではないか?といった疑問が湧いて来る。結末を理解するためにもう一度観なくてはならない。
どうせあらすじを描くので2回は観るのだけれど。「リトル・シングス」がもう一度観たいと思える映画で良かった。
共感性羞恥心という言葉があるけれど、映画に入り込んで憎しみや恐怖を共感し過ぎてしまうのも厄介なものだ。
20年前の感受性はかすみのように消え、図太いおばさんになった今ならそんな感覚を覚えることはないのかもしれないけど。