[映画】『オッペンハイマー』


長かった。判っていたけど、長かった。でも長さは苦痛ではなかった。
入りは8割くらい。
年齢層は幅広い。
TOHOシネマズのプレミアムスクリーンで観たので、音は良いが大きい。ロスアラモスで研究員たちが足を踏みならすところはズンズン響いた。振動まで伝わってきた。それがまるであの日が迫っていることを象徴しているようだった。
そもそも公開が一度は中止になったことがとても残念だった。その理由だって、違う映画(バービー)が原爆投下を揶揄したからで、観たかった派としては迷惑ですよ。
なんで観たかったかというと、アメリカという国がどう思っているのか知りたいし、意見を言うなら知っておくべきこともあるだろうと思うから。
原爆を作った物理学者の映画なんてけしからん!公開反対!ではダメですよ。
それじゃあ、なんでも反対の野党と同レベル。
映画の作りは3つの時代が交錯している。
1. オッペンハイマーが大学生くらい~原発が投下されるまで
2. オッペンハイマーが原子力委員会の追求をうけ公職追放されるまで
3. ストローズが公聴会をへて国務長官への就任が却下されるまで(モノクロ)
マッド・デイモンはすぐにわかったけど、ロバート・ダウニー・Jrはエンドロールまで判らなくて、ストローズ役の俳優、見たことある気がするけど誰だっけ?って思いながら見ていたらアイアンマンだった。
オッペンハイマー役のキリアン・マーフィーとアインシュタインは見た目が本人だった。
ストーリーは原爆実験に成功したことを礼賛しているわけではなかった。
オッペンハイマーの人生のもっとも輝かしい時期とその前後を描いていた。なのでロスアラモスでの数年間に最も時間が割かれているのですが、それは当然なことでしょう。
彼の人生の一部を見せながら、アメリカ合衆国の政治の闇を見せているというのが正しいかな。
戦中、戦後の米ソ冷戦時代を通して赤狩りが横行していた。彼の周囲には共産主義に流れる人々がいた。元彼女もそうだし、弟も、奥さんも一時そうだった。彼自身、集まりに行ったことはあるが党員にはならなかったと描かれている。(実際にそうです。)つきあいで1回行っただけでもFBIにマークされるイヤな時代ですね。今では当たり前の労働組合を作ろうという動きすらもヘタすりゃ赤狩りの対象になる。もちろんその一部が暴走する可能性はあるのですが。
映画の中では友人がスペイン内戦に義勇軍として参加し亡くなったなんて会話もあった。(ミュージカルNever say goodbyeを思い出します。)世界中で体制が揺れ動いていた時代ですね。
またストローズの公聴会で反対票を投じたひとりがジョン・F・ケネディだそうで、その名前を出す辺り、アメリカ人にとって彼は今でも特別な人だなと思った。
ストローズはこの映画では主人公を追い落とす悪役なので、それを次に追い落とす1票を投じた人物としてケネディはヒーロー扱いなのですね。
ロスアラモスで原爆実験が成功し、大喜びするシーンはやはりむかついた。とはいえ、もし原子力をエネルギーとして使用するための研究、実験が先で、その後にこれって軍事利用できんじゃねえ?破壊力抜群の爆弾を作れるんじゃねえ?という歴史を歩んでいたら、このときの成功を喜ぶシーンの見方は違うものになっているだろうか・・・。それでも後々を知っているわたしはむかつくのだろうな。
アメリカの原爆開発は対ドイツが目的で、実験前にイタリアとドイツが降伏したために日本に使われた。
そもそも制空権を奪われた時点で降伏していれば都市への空襲もなかった。日本は情報戦、資源、いろいろな分野で負けているのにそれを認められなかった。
オッペンハイマーを見ながら、第一次大戦~昭和20年の終戦まで(見方によっては29年まで)の日本政府の失策と自分たちで考えることを放棄した民衆の愚かさを考えた。(今も考えているとは言いがたいこともある。)
わたしたちの先人はいろいろ間違えたよね。そして止める決断を出来なかったよね。同時代にアメリカがやっていたことの一端を知ると、当時の日本のダメだがわかる。
それでも原爆投下を正当化するのは許せないし、京都は歴史的建造物が集まった貴重な町だからじゅうたん爆撃と原爆投下から外した。と誇らしげに語るアメリカ人は許せない。
京都の代わりにB29の攻撃を受けた、大阪や神戸はたまったもんじゃないだろう。
最後にアインシュタインの言葉は「まさしくその通り」と思いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?