渋滞の中の帰省の思い出 〜Recycle articles〜
子どもがまだ小さかった時、祖母から貰った『だじゃれ日本一周』を、子どもが一生懸命読んでいるのはいいのだが、暗唱できるようになってきているので、何か出来事があるとクチをついて出るダジャレがなんとも五月蝿いことがあった。
昭和ヒトケタ生まれだった故・義父が時折述べるダジャレのように、いかがわしかったり、汚ならしかったり、表現として問題があったり、という部分が、子どもに受ける秘訣なのかもしれないが、子どもたちの暗記力が凄いのか、それとも表現の力なのか、悩ましいところだ。
先日、モーモールルギャバンというバンドの「裸族」という歌を聞いていたときに、なんども「僕らは風呂に入る時裸だ〜♪」という歌詞が気に入ったようで、これまた何度もリフレインしはじめて閉口したが、子どもというのは、ちょっと下世話なものにひどく興味を惹かれるのかもしれない。
そうなると、私はまだまだ子どもなのかもしれない。
*
『だじゃれ日本一周』、今、まじまじと眺めてみたが、都道府県を北から順に述べていくという方式ではない。スタートは埼玉県。
長谷川義史さんの味のある「ヘタウマ」(80年代前半のグラフィック・デザインのモードの一つ)な絵が、その埼玉県の名産をいくつか取り入れながら、印象的に描かれている。
埼玉は、深谷ネギと、蔵と、さいたまスーパアリーナ、らしい。
そこから、茨城県、岩手県、岐阜県、岡山県、鳥取県と来る。
む、なんだこの順番は。意識的にか無意識的かよくわからないが、意外と地味で覚えづらい県からならんでいるのか?
次に、群馬県が来る。
まてまて〜ぃ。全然ダジャレになってないじゃないか。
と、子どもたちが暗唱しているときにも、ツッコミを入れたら、実際そう書いてあるんだからしょうがないじゃない、とのこと。「かかあ天下」がシャレってことなのか。この緩さが、何ともいえない味なのかもしれないと思って、読み進める。
なんとも緩い。
一つ一つが力が抜ける。
そうか!
子どもたちが、シャレなのかツッコミなのか、よくわからない掛け合いをしていたのだが、「いいかげんにしがけん」は、ダジャレだった、と。今、氷解。
この2作、聞いていて、なんでそんな表現にしたのかなあ、なんて思っていたのだが、この絵本は、見開きで一つのストーリーというかイメージを提示しているせいもあって、左右でちょっと似たモチーフが使われている。
だから、トイレにいく子どもと、ゴムが伸びたパンツをはく子どもが、並んでいるのですね。
ちなみに、長野県は、レタス(野辺山とか)、善光寺(長野市)、御柱(諏訪近傍)、田園風景(どこ?)、アルプス(松本)などが活写されているけれども、南信がないね、と思ったりしてみる。市田柿とか、飯田とかっぽいのではないかしら。
次のゆるゆるなダジャレだが、青森県。
これも少なくよそったはずの茶碗を子ども等が見ては、「あっおおもりけん、キャッキャッ」と騒いでいて、こっちは疲れていたから、「なんだ、多いのか」とザクッと減らしてやったりして、大人げなかったふるまいがあった。
そして、見開きとしては、衝撃的なセットが、大阪府と奈良県だ。
これを、私の実家に帰省する道すがら、ずーっとこの掛け合いを聞かされていた。最初はほほえましく聞いているが、さすがに渋滞がひどくなってくるとイライラして、「おーしゃかぷー、やめろう!」と言うと、ゲラゲラと笑い転げて止まらない。
脱線するが、私の実家は、岩手県の盛岡以北の寒村である。
普通、お盆に混むのは知っているので、時間をずらすか、日にちをずらしている。
しかし、その年に限っては、渋谷で飲み会があった翌日の朝6時に、新宿から首都高経由で出発した。しかし、すでに竹橋ジャンクションから不穏な空気になり、小菅(東京の東北のはじっこ)あたりにいくまでに、かなりの時間を要してしまっていた。
だから、高速を降りて、亀有、八潮、流山、野田、柏、常総、下妻、筑西と、普段行かないようなルートで北上した。
しかし、八潮から流山に行くのに、川が遮って、なかなか向こう側に行けない!そんな中で、「たこやきたべて おおしゃかぷー」とか「ねえ、奈良県ってどこにあるの?」とか、そういうことを大声で聞かれるものだから、全く参ってしまった。ちなみに、ほぼ下道で、岩手に辿り着いた結果、15時間もかかってしまった。
この次のページも衝撃的である。
何か千葉に恨みでもあるんかいな、と思うほどの、「しばけん」クオリティだ。全然、違う。そして、「わっかやまゆうぞう」も、「この人、誰〜」と聞かれると、答えに窮してしまう。俺もよくわからんのだよ、世代が違うから。「えっと、エレキの若大将っていうか〜」などと適当なことを述べていると、すぐに、関心が違う方に向いてしまう。俺の話を聴け。
そして、だんだんシャレも息切れして来たところで、秋田県と沖縄県。
沖縄も、何がシャレなのかもうよくわからないが、この一冊に対して、キチンと突っ込んでいるところに、明瞭な意図が感じられて、最後の最後で、腑に落ちた。この順番で、都道府県を順番に構成するのは大変だったろうなあ。労作に感謝。
最後に。
いや……もう、俺はいいよ。
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