ある意味裏ボスの九尾の狐 〜ある社の人間模様14〜

シン・タツタという人がいる。「誰々がAの悪口言ってたよ」とAにいうのみならず、「Aが誰々の悪口言ってたよ」と「誰々」にもいうので、Aと「誰々」が実は親しかったりして、シン・タツタの悪行がバレる。でも、中途で入ってきた人とか、女慣れしていない中年男性を褒めちぎり、シン・タツタが嫌だと思っている仕事を全部やらせている。

特に、変に責任感の強い男で、他部署の人と交流しないような性格の、シン・タツタの二枚舌ならぬ九枚舌に疎い男性は、シン・タツタの被害者意識を間に受けて、意見を奏上したりしてしまう。それによってシン・タツタは、心象を悪くせずに目的を達したりする。

最近、そんなシン・タツタに魅入られたのが風間くんである。

シン・タツタは、九尾の狐とも妲妃とも言えるような、口先だけの人物で悪い意図と善き意図がシームレスにつながっていて、いい意見もあれば一方でただ人を混乱させる意見も言う。社交的で、能力はある人なので、活かし方次第であると思う。徒党は組まないが、寄生先を求めるので、いつも寄生木っぽいなあ、と思いながら見ている。

シン・タツタは有能なだけに弁舌が巧みである。ただ、巧言令色少なし仁、を地でいく人なので、シン・タツタの説得にやられた風間くんが、シン・タツタの状況を良くして、他の人の状況を悪くするような提案を次々にする。未熟者も巻き込まれかかったが、ハッキリと楔を打ち込んでおいたので、これ以上シン・タツタも動こうとはしないだろう。

シン・タツタの目的は、嫌なことをできるだけしない環境で働きたい、だけだ。それ以上のことをやり出したら、さすがに看過できない。

風間くんは、シン・タツタのためにした仕事を残業として申告したら、人事とP腹さんから呼び出されて、クンロクをえらい入れられたらしい。それを風間くんから聞いて一緒に憤慨するシン・タツタ。待て待て、お前がそれをさせたのだろう、と未熟者は思う。

シン・タツタという人は、ただ、ユニークな人ではある。女の武器をキチンと使いこなして、自分の場所を確保してきた有能な人であり、その社交性と弁舌と真面目さについては認めている。一緒に仕事をしたこともあるが、話が早いのと、主張は明確なので、ギブ&テイクがわかりやすい。ただ、むやみやたらに人の悪口を言うし、嘘もつく。嘘をつきすぎて、みんなにすでにバレている。

ただ、未熟者にとって重要な徳目である「勇敢さ」と「律儀さ」に欠けているシン・タツタは、やはり警戒すべき人の一人である。


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