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「開高健の名著 『風に訊け』」懐かしい青春の書、40年前の週プレの連載だけど一向に古びていない、この感性の人間が還暦になっても歳とっていないように思える

小説家(兼釣り師)開高健

懐かしい、開高健の名著をご紹介したいと思います。
小生、ご存じの通り還暦を一年超えた老生ですが、40年ほど前の昭和50年代から六十年代(1980年代)に青春の日々を過ごしましたが、当時週刊プレイボーイに人生相談のコラムを連載していたのが、小説家(兼釣り師?)の開高健でした。

自分を叱咤激励した人生指南書

毎週欠かさずこのコラムを目的に、時に大学生協で立ち読み、時に購買していました。
自分自身の、近代の門出に立ち、
一つは、専攻した化学をどうものしていくのか、それは人生に直結したシビアな設問でしたが、だからこそ当時目の前にいた女神のように素敵な女性に恋焦がれざるを得ずであればこそ実らなかった恋を胸に抱え込み、惑いの中にいた自分をいつも慰め、ときに叱咤しまくってくれたものが、この『風に訊け』だったように思います。

連載を終わり、単行本として上下二冊が刊行されました。
それが以下のものです。最近は文庫化されているようですが、このサイズ、この質感が私には何とも言いようのないしっくり感を持って存在しています。

人生は自分の感性で生きていくしかないし、そうでなければ生きてるかいもない、その姿勢こそが背筋のしゃんとした人生を作る

連載の終わった後、この本が刊行され、繰り返し繰り返し、ときに深夜のとばりの中で、ときに旅の途中のホテルの早朝に、読み込み過ぎるほど読み込んだものです。

開高健が、これはかなり入れ込んだ連載だと思います。今読み返してみても、一向に古びていない。40年の月日が横たわっていると誰が思うだろうか、というくらいに感じます。渾身の作と言ってよいでしょう。

もちろん、彼には文学作品として相当な作品、エッセイや紀行なども今なお多くのものが愛され続けていて、私自身多くのものを読み、胸に横たわっていますが、この『風に訊け』はあの頃の近代への生みの苦しみ、開放、喜びなどがないまぜになって、懐かしさを手繰り寄せるものになっています。

この書をきっかけに人生を基礎基本から問い直したおかげで自分自身の近代をやり通してこれたとの実感が胸に迫ります。
このような感性で生きてこそ、自分の人生は妙味のあるものになったと思われます。
精神の上であくまで自責的に生きること、これがしゃんとした人生を作るものなのでしょう。

人生を通して様々な人間を見てきましたが、やはり信頼がおけ、ここまで背筋を伸ばしてしっかり生きてきた人間だと思うのは、このような種類の感性を持った人間だなあ、としみじみ思います。

若者よ、絶望の中にも希望をもって元気に生きて行け

開高健は、こんなことを優しく語ってくれていたのかもしれません。
今の日本を見て、開高健は何を語ってくれるのだろうか、この疑問は私のこれからの人生の一つの疑問としていきたいと、最近日々『風に訊け』を読み返しながら思っています。

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