見出し画像

『安倍晋三回顧録』読後感 その1/失敗経験ゆえの長期政権

『安倍晋三回顧録』を読了しました。

失敗あっての長期政権

様々種々の重要なことが書かれていました。
その中で指南書という観点でもっとも重要なことは、「失敗あってこそ第二次政権」があったということです。
第二次安倍政権が、日本にとって死活的に重要な政策を実施し、日本の安全と日本人の雇用に引き返すことのできない立場を与えたことを考えれば、第一次政権のあのみじめな失敗はある種福音のような響きのある出来事だったとも言えます。
第二次政権の成果とその意味については、別途記事にするつもりですので、今回は、人生の指南書という観点で、失敗の意味について記してみたいと思います。

第一次政権のみじめな失敗

第一次安倍政権の失敗は、本当にみじめなものだったと思います。
後から振り返れば、実に教育基本法の改訂、憲法改正の国民投票法、防衛庁の省昇格と一年でこれだけの政策を実行したかというほどの歴史的成果があったわけですが、政権発足直後の高支持率からすぐに支持率が低下し、夏の参院選では惨敗そして体調不良による退陣と恐らくこれ以上はない屈辱を得ての退陣だったわけです。

失敗の効用

この大きな失敗が第二次政権を長期政権たらしめ、更なる大きな政策実現による高みへと導いたものだったというのは、安倍晋三本人が正直に語り明かすように間違いないことだったと思います。

あのくらい大きな失敗ですから、どれだけ骨身に染みるものであったかは想像に難くありません。
私にも経験がありますが、自らが責任者としておかした失敗と言うのは本当に骨身にしみます。四面楚歌は痛切に胸を刺します。
そこから時間を掛けて再生へと向かう中で、二度同じことはしない、理不尽に叩いたものたちへ正当な手段で見返してやろうとする意志など、が固く奥深くに形成されます。これはもう理屈ではありません。
汚辱を雪ぎ、自らの正統性と名誉を取り戻すまでは、決してあきらめきれるものではありません。

安倍晋三でさえそうでなければ、第二次政権であれ程長期にわたり気を引き締め続け成果を出し続けることができなかったと言えるのかもしれない。

それは、いかな人間であると言えども所詮人間なのだという証明に他なりません。

さあ、失敗を恐れず挑戦しよう、失敗したらそれは天の恩恵だ、再生に向けて歩きだそう、その中にこそ何か大きな意味がある!
という声を聞かなければいけないのでしょう。
失敗を恐れず挑戦せよ、との教訓はただの教訓ではなく、実利を伴うベンサムの功利主義にも似た偉大な哲学だったということになります。

真摯な取り組みはなにごとかを育む

安倍晋三の場合、第一次政権の失敗は、そこに失敗だけでない高い志のようなものがあったことがのちに同志とも言える有為の人たちを糾合することに繋がりました。

第二次政権の官邸を構成したのは、第一次政権で安倍晋三に共鳴し苦楽を共にした士たちであったということです。
第一次政権での教育基本法の改訂、憲法改正の国民投票法、防衛庁の省昇格というものの中にそれが十全に顕れていることでそれはわかります。
真摯な取り組みは有為の人の志を繫げるものになるということなのでしょうか。

失敗の中にこそ学ぶことがあるということ

『安倍晋三回顧録』を人生の指南書として読むという観点において、失敗の中にこそ学ぶことがあるということ、これが第一だと私は思いました。








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?