見出し画像

「創薬の世界も『掛け合わせ』戦略が大事」ーその2 /中外製薬個人投資家向け説明会 と AnswersNewsノブ氏のコラム

ノブ氏がコラムで論じている技術

以下、ノブ氏が紹介していて、『掛け合わせ』ということを言い、複合化している技術について簡単に紹介します。 

まず、低分子医薬における複合化の例として、
PROTACというモノを上げています。PROTACというのは、「Proximity-Based Modalities for Biology and Medicine」というもので、キメラ分子(1つの分子に2つ以上のリガンド構造を有する分子)を使って2つの薬効因子を接近させる創薬技術だそうです。
最近では、抗体医薬にこのPROTACを結合させて、抗体医薬複合体(ADCと言い近年第一三共あたりが活発に取り組んでいる)として高選択性と非常に高い安全性を持った医薬を期しているという例を挙げています。

そして、コロナで注目されたm-RNAとそれを搬送する脂質ナノ粒子の組み合わせを上げ、m-RNA以外の薬効分子も脂質ナノ粒子で搬送される医薬も期待できる、と述べています。
更に最後には、二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE抗体)というものを上げ、疾病部分とT細胞に選択的に結びつき、自己の免疫を使って疾病を治すという、典型的にはCAR-T細胞治療という例を挙げています。これは、中外のバイスペシフィック抗体と同様の機構のモノと言えます。

『掛け合わせ』=複合化の利得

ノブ氏も言ってるように、従来を大きく超える効果が期待できる、従来は不可能のされた新機能を期待できるということが、複合化という手法にはあります。
私の専門の材料科学の領域においても、ナノスケールの構造の中で複合化すると、従来は相反する機能をいとも簡単に両立するということが可能になるという例がいくつもあります。実際は私が一から開発した技術もそういうものです。
医薬という分野においても、それがナノのスケールに立脚している点でその公式に合致するということは私から見れば当たり前というふうに思います。

これから医薬の分野において、ますます複合化により大きくさらには新しい効能を持つ医薬が現れるだろうと思います。

ノブ氏が言うように、
「この(複合化の)方程式を意識すると、ケミストは低分子だけ、バイオロジストはバイオロジクスだけ、という時代は終わりを迎えつつあるように感じます」
ということは、もう既に当たり前の時代だと思います。

若き技術者に大いに期待したいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?