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「三十五年越し エピローグ9」/男には生涯忘れることのできない一人の美しい恋人がいる、富士眞奈美の話

このエッセイめいたブログでは、「男には生涯忘れることのできない一人の美しい恋人がいる」との普遍則の一例を書いてきたのかもしれない。

しかし、よく言われるように男と女では過去の恋愛に対する認識が全く違うものらしい。男性は、悪く言えば過去の女性のことをいつまでもウジウジと考え、良く言えばその過去をロマンチックに美化さえしてしまったりする。一方女性は後は振り返ることはあまりなくあくまで現実的に今を力強く生き抜くと言う。そういう姿の対照が鮮やかに語られたりもする。

本日8/5それに相当する記事に出会ったのだが、この富士眞奈美の語りは
そんなステレオタイプに収まらない魅力があった。

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冨士眞奈美「亡くなる1か月前に会いたいと言われ…」かつて熱愛を報じられた流行作家との思い出(週刊女性PRIME) - Yahoo!ニュース
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20代前半のころ、ある作家の男性と恋愛関係にあり、週刊誌ネタにもなったが、別れてその後は会っていなかったという。
ところが40年後、その男性から逢いたいとのリクエストがあった。驚いて最初は断ったらしいが、男性は死を前にしていて是非とのことで肯んじたらしい。

「銀座の割烹店で二人で話をした。長い年月が流れ、日常の中でいろいろなものが忘れられていく、自分と同じように彼も忘れていると思っていたが、彼は忘れていなかった。」
この会食の1か月後に彼が亡くなったという報道を聞いたという。

以前に彼の愛読者が「今までで一番好きだった女性は誰ですか?」と尋ねたことがあり、そのとき、彼は、富士眞奈美の名前を挙げ、「優しかった」と答えたという。

冨士眞奈美は、それに対し
「私が優しかった?さっぱりわからない。」
「私は、その銀座の会食では、優しく振る舞うことができたのだろうか。」と語る。
そして最後に「私にとっても彼は忘れ得ぬ人だった。」と。

この発言には、そこで目が止まり、胸を刺し心熱くするものがある。
なんという優しい、可愛い女性なんだろうか、この感性と知性はどの女性にもあるものではないと思う。富士眞奈美の胸の奥にはなにかが宿っているとしか思われない。
この富士眞奈美の優しさ、こんな富士眞奈美だからこそ、その男性は彼女を生涯愛し続けたに違いない。そして、きっと彼は今頃天国で富士眞奈美のことを思って微笑んでいることだろうと思う。

別の話だが、似た話として、戦前戦後を通じて優れた財政通の政治家、賀屋興宣が晩年若き日に愛した女性との恋物語を石原慎太郎に漏らしたというのを石原の書いたもので読んだことが有る。

さきの作家氏や賀屋興宣とは格が違うかもしれないが、私にとっても、若き日に心から愛した女性がいることに改めて感謝をしたいと思う。
そして、作家氏と同じように生前に再会する、ということは叶わぬにしても、いつか召される天においては、是非とも昭和六十二年のあのデートの時に戻り、もう一度美しい白地に水玉のワンピース姿の美智子さんとゆっくりと語り合い、願わくば手を繋いで御堂筋を思う存分に歩いてみたい。



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