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「創薬の世界も『掛け合わせ』戦略が大事」ーその1 /中外製薬個人投資家向け説明会 と AnswersNewsノブ氏のコラム

創薬の世界の二つの情報・中外製薬とノブ氏

私の専門が化学であることは、いくつかのマガジンの記事などでお知らせしてきました。
これまでもいくつか記事を書きましたが、今回は創薬関係について、中外製薬の個人投資家向け説明会とAnswersNewsノブ氏のコラム(現場的にどうでしょう)について感じるところがありましたので述べてみたいと思います。

中外製薬

中外製薬は20年ほど前に、スイスのメジャー、ロシュの傘下に入りましたが、かなり独自性を維持した経営を行い、ロシュとの連携力を生かした効率的経営や秀でた研究開発力で、近年国内主要製薬メーカーと比べて極めて優れた製薬メーカーとして発展してきています。
その実態は、株価時価総額にも現れており、実に7兆6千億円に上り、武田薬品や第一三共と同等でその他の製薬メーカーを引き離しています。
近年になり、モダリティーとして国内でいち早く抗体医薬を上市し、今その新薬開発力という意味では最も注目される日本メーカー(正確にはロシュ傘下なので海外資本となるのですが)と言えます。

中外は、実に丁寧に投資家説明会を実施しており、これまでにもその技術ドリブンな創薬展開戦略を投資家にわかりやすく説明しています。
(なかなか国内ではここまでのことをしてくれる創薬メーカーは無いように思います。私自身は、その戦略の中身、経営数字や投資指標などを見て精査し、百株ですが昨年2月に株式取得しました。)

中外製薬の抗体技術

上記の説明会は、近々個人投資家向けに行ったもので、得意の抗体技術について、技術ドリブンでどう創薬戦略を描きつつあるかを説明したものです。

この中で中外は、抗体技術を深化させ、その機能化をはかっています。
(通常の抗体というのは、病原である抗原を捕まえ無毒化する、生体に備わった免疫の重要構成成分です。この抗体を医薬として使用するには、50年ほど前に可能となったモノクローナル抗体を用いていますが、近年、抗原への高選択性から医薬として極めて優れた効能を有するものが陸続と上市されてきました。
その中で、日本でいち早く抗体医薬を上市した中外製薬は、抗体の機能化もいち早く取り組み、近年の好業績につなげているようです)

説明会中では、「リサイクリング抗体」「スイッチ抗体」「バイファンクショナル抗体」を紹介しています。
これらは、抗原を捕捉するだけの抗体そのものを複合化し、機能を付与をしています。それによって、生体内の疾病部分での効能が増幅します。
1)リサイクリング抗体:より効能が長続きする
2)スイッチ抗体:疾病箇所選択的に効能発揮ーーより副作用なく
3)バイスペシフィック抗体:疾病部分の免疫治癒力を強力に発揮し効能発揮
となるようです。

この抗体技術のキモは化学的に言って、複合化です。

この複合化というのは、機能材料の分野でも特に30年ほど前から注目されてきた研究開発戦略で、様々な新機能、高機能材料を生み出してきています。
我田引水になりますが、私が一から生み出し仲間とともに製品搭載した機能材料技術もこの複合化戦略に基づいた技術です。

バイオの分野でも、化学的物質科学に立脚している以上、この複合化戦略が強力な手段となるのは、当然と言うべきだと私は思います。

そして、材料分野でも、創薬分野でも、この複合化戦略が今後の技術革新の重要な中心手段となっていくだろうというのが、本コラムの主眼点ですが、続編その2で、AnswersNewsでのノブ氏のコラムでさらに説明したいと思います。


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