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「三十五年越し エピローグ4」/『雨に唄えば』と水玉の意味に気付いて変わった心の景色

『雨に唄えば』は本篇で記したが不足があるので付け加えさせていただく。

・『Singin in The Rain/雨に唄えば』
最も愛されてきたミュージカル映画、スタンリードーネン、ジーンケリーの共作でありマスターピース(傑作)、ハリウッドミュージカルの最高峰(1952年)。昭和60年夏、大阪梅田御堂筋沿いの映画館のリバイバル上映が出会いの場となった。

その時は23歳で、俊敏さや筋力、心肺の持久力などはち切れるほどの運動神経の塊だったころの私は、冒頭から流れるジーンケリーとドナルドオコナーのリズム感溢れたキレッキレのダンスに、体ごとリズムごとスクリーンに吸い込まれた。

『Make en Laugh』 の場面ではドナルドオコナーと一緒に体ごと気持ちごとひっくり返るごとくに心は躍動した。おかしみを誘う敵役のジーンヘーゲンとイノセントで愛くるしさ満点のデビーレイノルズのからみにぴったりと心が追いついて私自身も心技体一体となる。

そして映画は恋が成就の形を魅せながら、一方でトーキー映画の勃興という困難が立ち現れる、、、と、そのときである、深夜落胆して帰宅したケリー、オコナー、レイノルズの三人は突然啓示を得たように、、、、、希望に満ち溢れ、唄い、踊り、くるうばかりに舞う、舞う、舞う、、、、、映画監督の原田真人も言っていたが、この『Good Morning』がこの映画の最高の場面である。これほどの躍動感をもって、これほどの厚顔さで、若さの傲慢と生きているという歓喜を表現したものをほかに見たことがない。

観る者の心と体の高揚感も最高潮に達する。そしてキャシーことデビーレイノルズを家までおくったケリーは、、、、どしゃ降りの雨の中、ゆったりとしたメロディーとシンプルな韻律とともに、これ以上ない能天気な恋の喜びを、円熟極まった邪気満点の踊りでスクリーン一杯に表現し尽くす。映画史上に残る名場面であり、雨のロマンティシティがここに創造された。

本当に素晴らしい世界一のミュージカル映画だと思う。



・しかし、これまで純粋無垢に好きだった『雨に唄えば』が変わってしまったことになる。

本編(6)の「『雨に唄えば』と大馬鹿者」に記した通り、ちょうど今年(2022年)の梅雨の時期に、この追憶の文案を繰り返し試行錯誤しているとき、水玉の服装をよく見かけ、何気に本当に何気になのですが、はっと彼女の意図していたことに気付いてしまった。


どうもこうもない、なんという大迂闊。こんなことってあるんだろうか?三十五年という月日はもうほとんど異次元だというのに、気付いたときから一カ月になるが未だに気付くと悶絶している自分がいる。

実際、この三十五年の心の景色が全部ひっくりかえってしまった。

余震はまだ続いている。


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