マスク売りの少女

むかしむかし、雪の降りしきる大みそかの晩。みすぼらしい服を着たマスク売りの少女が、寒さにふるえながら一生懸命、通る人によびかけていました。
「マスクは、いかが。誰か、マスクを買ってください」
 でも、誰も立ち止まってくれません。今日はまだ、一枚も売れていません。

少女は寒さをさけるために、家と家との間に入ってしゃがみこみました。「そうだわ、マスクで暖まろう」一枚のマスクを顔につけました。
マスクの布は、とても暖かでした。少女はいつの間にか、勢いよく燃えるストーブの前にすわっているような気がしました。「なんて暖かいんだろう。。。いい気持ち」

少女がストーブに手をのばそうとしたとたん、ストーブはかき消すようになくなってしまいました。
少女はもう一枚、マスクを重ねてつけてみました。
あたりは、ぱあーっと明るくなり、光が壁をてらすと、まるで部屋の中にいるような気持ちになりました。

部屋の中のテーブルには、ごちそうが並んでいます。不思議な事に湯気をたてたガチョウの丸焼きが、少女の方へ近づいて来るのです。
「うわっ、おいしそう」
その時、ごちそうも部屋も、あっという間になくなってしまいました。
少女は、マスクを重ねてつけると願いが叶うのではないかと思いました。

少女は、やさしかったおばあさんの事を思い出しました。
「ああ、おばあさんに会いたいなー」
 少女はさらに、マスクをつけました。
 ぱあーっとあたりが明るくなり、その光の中で大好きなおばあさんがほほえんでいました。
「おばあさん、わたしも連れてって。いなくなるなんて、いやよ。・・・」

少女はそう言いながら、残っているマスクを一枚、また一枚と、どんどんつけ続けました。
重ねたマスクが三十枚になったとき、おばあさんは、そっとやさしく少女を抱きあげてくれました。
「わあーっ、おばあさんの体は、とっても暖かい」
 やがて二人は光に包まれて、空高くのぼっていきました。

新年の朝、気が付くと少女はマスクを三十枚重ねた姿で家の中にいました。何やら外が救急車の音でさわがしいです。どうやらコロナというものが流行り、ほとんどの人は死んでしまいました。少女はマスク三十枚していたおかげで何の症状もありません。なのでマスクは三十枚つけなくてはならないんです!完


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