麻雀代走屋⑦大型新人

「今日からお前と一緒に行動するK君だ。こいつは麻雀強いぞ。○○さんとこからしばらく預かることになった。仲良くやれよ。」

Tさんから新しく麻雀代走屋を一緒にやる人を紹介された。他の代打ち業のとこからしばらくの間うちにくることになった。

Kさんは見た目が非常にコワモテでいかにもという感じの風貌だった。歳は30くらいだろうか。

今日の仕事の依頼主兼相手はスロットで生計を立ててる通称スロプロ2人だ。私より少しだけ歳上だろうか。かなり若い。ただし麻雀に使えるお金がこれだけあるのであれば成功者なのだろう。

勝つために数字を追うという概念は似たところがあるかもしれない。

ルールは3人打ちイーハンありありウーピンとウーソーはオール赤の門前祝儀。35000点持ち40000点返し、レートはハコテン約60000円のデカピン、順位ウマが2着0、3着-30

最初は私が打ち、Kさんは私の後ろで観戦することになった。

私は順調な展開を迎え+スコアを積み重ねていた。この2人はいつものことなのだが態度が非常に悪い。何様だろうか。強打や引きヅモ、無発声や暴言やりたい放題。今の時代のフリー雀荘なら注意の荒らしだろう。

途中でKさんが

「すぱろーさん次代わりませんか。」

と。

私は了承してこの半荘を終えてからKさんと交代した。

するとKさんが座った瞬間に空気が変わった。

「よろしく。」

この一言で場を制していた。さっきまで横暴な態度だった2人もすこし萎縮していた。少なくとも暴言はあまり吐かなくなった。

しばらく時間が流れ会話もなく発声以外では淡々と麻雀牌の音だけ聞こえる状態が続いていた。そんな中で私のKさんへの印象を変える半荘があった。

オーラス
親番スロプロA
33000点
南家Kさん
38000点
西家スロプロB
34000点

親から8巡目にリーチが入った。Kさんはタンヤオ赤赤ドラの47s満貫と祝儀2枚をテンパイしてるところ1発目にション牌の発を持ってきてツモ切り、2発目にノーチャンスの9pをツモ切り3発目に無筋の6sを持ってきたとこで降りへ転じた。結果は押し気味だったBが親番Aへ放銃しKさんは2着で終了した。

その日は私もKさんも快勝で2人で50万ほど持ち帰ることができた。その帰り道Kさんに上記の半荘の事を聞いてみた。

結構押す人も多そうだしなんならゼンツを選択する人もいるかもしれない。降りを選択する人のほうがもしかしたら少数派かもしれない。

私「なぜ降りたんですか?」
K「すぱろーさんは押すんですか?」
私「私は降ります」
K「じゃあ同じ事考えてると思いますよ」
私「Kさんは押すと思いました笑」
K「打てばラス、降りれば確実に2着。濃い目の6s引いたとこで終わりです。結果は通っていましたが長くこの稼業で凌いでいくのなら2着順ダウンのウマは避けたほうがいいと思います。安定を取るべきでしょう。」

見た目とは裏腹にKさんが麻雀においてものすごく繊細に打っているということにびっくりした。人は見た目で判断してはいけないと言うがこの事だと思った。

その日はKさんと食事をして麻雀についてかなり話し込み仲良くなれた。

TさんからKさんは強いと聞いてはいたがあまりアテにしてなかった。しかし話をすると麻雀というゲームをよく理解してる打ち手だなと感じた。本人曰く押す方らしい。Kさんから見ると私は押さない方らしい。ただしサンマの前提として押しはきつめでその中で押さない方とのこと。いろいろと興味深い話ができた。見た目と喋り方は恐ろしいのに麻雀の話をしてるときは子供みたいで面白かった。

これから2人は荒稼ぎしていくことになった。

つづく

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