今年の青森山田高校が史上最強かもしれない件

高校年代のサッカーの話である。

サッカー的には「2種」年代(高体連、クラブユース)のカテゴリーだ。ほにゃららUー18とか、なんとかユースとか、〇〇高校サッカー部、みたいなやつ全部。最近だと人気漫画のアオアシとかで取り上げられたりして馴染み深いかもしれない。

筆者は、だいたい1990年〜2015年ごろの期間だろうか、結構な頻度でこの年代のサッカーを現地観戦しに行ったり、観戦記を匿名で掲示板にUPしたりというようなことをしていた。その期間中に現地観戦した試合数は700〜800くらいだろうか。

初期は高校サッカーの全国大会や首都圏予選だけだったが、徐々に
U18クラブユース選手権(略称クラセン)とその関東予選、
総体(とその県予選)、
全日本ユース選手権(プリンスリーグが始まるまでは地区大会のご褒美な小規模の大会だった)、
プリンスリーグが始まってからは、
プリンスリーグ関東、
高円宮杯全日本ユース選手権(各地のプリンスリーグ上位と総体、クラセン上位枠が集合する最高のお祭り大会だったのだ、何より1会場で2試合続けて観戦できた、、今はプレミアリーグと、その東西チャンプ一発勝負になってしまったが、配信もあるし1試合のために僻地に行く気力略)、
国体(以前は今のようにU16選抜ではなくU18のガチ県選抜対抗だった)とその関東予選(ミニ国体)、
Jユースカップ、
U15全国大会、
などにも手を広げて金網越し、ピッチ脇観戦を堪能していたものだ。

さて、よく言われるいわゆる「ユース」(正確にはクラブユースだ、主にJリーグクラブの下部組織はJユースと総称される)と「高校」(サッカー的には「高体連チーム」という言い方をする)の力関係なのだが、大体以下のような変遷を辿ってきたという認識を筆者は持っている。

〜1997
2種世代のサッカーといえば、高校。
Jユース?エリートがボールコネコネしてショートパス繋ぐサッカーしてるんでしょ、形から入ってるけどガチじゃ弱いよね、的な。

〜2002
うーんガンバユースとかジュビロとか、個々の才能はJユースにすごいのいたりするけど、やっぱ寄せの早さとか球際、執念的なところで高校には負けるから、試合すると脆かったりするよね。

2003
広島ユースが当時世代トップチームと思われていた国見、帝京、星稜をグループリーグでボコボコに。トーナメント1回戦では平山とかいた最強国見をチンチンにして勝利。なんじゃこりゃ。個々が上手いのに高校みたいに根性出して走る走る。全国から集まったエリートを広島の山奥で寮生活の純粋培養で鍛え上げるゴリさん軍団が発見された(ま、この大会負けたけどね)。この時から、クラブユースが高体連のアドバンテージだった執念、球際、縦の攻め、を融合させ、素材の優位性でそのまま勝つ時代へと突入した。

2004〜2013
キラ星の如く才能を並べたJユースが高校部活的長所を融合させ、高校チームを圧倒する時代。
でもA代表は高校出身ばっかりじゃん、とか言われてた。高校サッカーは群雄割拠時代へ。

2014〜
ごく一部のトップ高校が、充実した設備などを背景にJユース並に素材をかっさらい始める。また「プロ育成機関としての高校部活」が見直される流れが勃発。青森山田に、Jユースの有望株(柏ユースの中村やヴェルディユースのFW神谷)が「厳しさを求めて」わざわざ移籍する流れが出来たのが象徴的。一方、高校指導の長所を融合してきたJユースの輩出する人材がA代表を席巻し始める。

で、今年の青森山田だ。

今年、年代のトップリーグであるUー18プレミアリーグ(EAST)で、青森山田高校はびっくりするくらいの強さを発揮している。

高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2021

名だたる関東のJクラブユース、名門高校を相手に7連勝、得点26 失点2 の無双っぷりである。筆者の記憶によれば、プレミアでここまで序盤圧倒的に無双したのは2013年の流経大柏以来かもしれない。配信等で何試合か観たのだが、内容もかなりヤバイ。

基本的に縦に速い攻めで、放り込み、サイドからのえぐりとハイテンポで手を緩めないのだが、個々が1対1に強く、ボールを失っても切り替えが凄まじく早い。
運動量抜群のドイスボランチはそれぞれ抜群の得点力とボール奪取力のおまけ付き、前線にはゴリゴリ突破力とヘッドの決定力まで兼ね備えたFW、両サイドはスピードあって、CBは体が強く寄せも早い、で得意のロングスローもあり、ときたもんだ。

全勝対決だった天王山の清水ユース戦もシュート数16−3で圧倒。

このまま完成度を増してゆけば、ちょっと高校選手権レベルだと対抗馬すら見当たらない力関係になるかもしれない。対抗するには、誰かキーマンを抑える、とかでなく、尋常じゃない全体的な圧力をなんとか潜り抜けて攻め返すだけのクオリティが必要だ。

夏の総体は真夏の連戦、しかも35分ハーフで、実力校が早々に敗れるなど波乱が多い大会ではあるが、あの圧力に70分耐えられる高校チームはそんなにいなそうだし、タイトル全部取っちゃうまであるかもしれない。

とまあ物事そんな単純じゃないし、風向き一つな部分もあるかもしれないが、久々に、わかりやすい「無双状態」チームが登場したので、今後注目したら楽しめるんじゃないだろうか、という話でした。

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