眠り
眠りに寛容な家庭で育った。
母は朝起きれない人で、大昔は確かに朝起きていたと思うのだが、中学生頃からの記憶ではたしか、まだ寝ている彼女に「いってきます」と言って家を出ていた。休みの日は、昼過ぎまで寝ているので心配になるほどだった。今も、どれだけ昼寝をしても夜はことんと寝る。
父は仕事柄、年柄年中いつも時差ぼけしている。していなくても、テニスに行ってから仕事にいくからと4時に起きていたり、かと思えば仕事先の時間にあわせるからと昼からしっかり寝て夜7時ごろ仕事に出たりしていた。
そんな2人だからか、私は寝ることにすっかり肯定的に育った。早く寝なさいと怒られたことこそあれ、寝すぎだと怒られたことはない。
その反動からか、高校生のころは朝4時から活動したりしていた。大学にはいって、居酒屋やスナックで深夜すぎまで働いたり、コンビニで日の出前からレジ打ちをしたりしていた。そのころはただ、明日起きるために寝ていた。布団に横になって10分しないでいびきをかいていた、と当時一緒に住んでいた友人は言っていた。
大学3年の夏、夏休みからそのまま休学した。何もできなくて、泥のように眠った。朝も昼も夜も寝て、暑い夏だったから目がさめたら軽い脱水で、頭痛がした。それまでの分の睡眠を取り戻すように眠った。その時は梅が丘にあるシェアハウスのに住んでいて、そこにいた間はほとんど眠っていた記憶しかない。
そのあと、実家に帰ったりアルバイトをまた始めたり、部屋を借りたり旅にでたりした。
徐々に眠ることがすきになった。風呂からあがり、髪を乾かして、お茶をいれて日記を書いてはみがきをしてふとんにはいる。週に2回ほどシーツを取り換える。ふっくらとしたかけぶとん。祖母の家からもってきたヘッドライト。ドイツ製の電球しかはいらない、面倒なやつ。
よく寝つけない日は、歯磨きをして寝巻きをかえる。それでもだめならシーツを変える。それでもだめなら部屋の空気をいれかえ、みにつけているものをすっかり脱いで眠る。冷たい空気と、さらさらしたシーツを感じながらだととてもよく眠れる。
今年の3月からは毎日恋人と寝ている。朝起きたら彼がいるのは、いい。時々、1人のときはそれはそれでベッドが広いので、いい。
先週末からは彼の実家に来ていて、上げ膳に据え膳で食べ過ぎでずっと眠い。しかも、暑いので日中は部屋の中にいるしかない。ばかでかい扇風機をまわして、飽きるまで昼寝をする。目がさめると、窓からやしの葉が風に揺れるのが見える。
今、眠ることは至福だ。
サポート頂くと、家に緑が増えます。たぶん。