見出し画像

「おなじ話」からはじまる話

人と縁が繋がるときは、偶然がかさなってぽんぽんと進んでいく。

私が今付き合ている人と一緒になったのも、よくよく考えてみると偶然がいくつも重なってのことだった。

まず私が大学5年目にしていつもの気まぐれを発揮し、卒業を延長して留学することにしたこと。

それから家探しを友人の知り合いのブラジル人に頼んだこと。彼女はパラナ連邦大学の日本語科の学生で、学科のグループトークに「日本人の女の子が家を探しているのだけど、どこかありますか」と投稿したそうだ。それを私の恋人になる人が見て、寮長に伝えた。恋人は一時期だけ日本語科に在籍していて、その後、音楽学部に転部しているのだが、なぜかグループにはずっといたらしい。

私はずっと、最初に頼んだブラジル人の女の子が寮に直接連絡をとってくれたのかと思っていたのだが、そうではなく、どうやら恋人に「発見」されたらしい。最近それが発覚してびっくりした。

それからもう一つ、面白い偶然があった。

彼はいつも、日本の曲をギターで弾いている。「キセキ」とか「小さな恋の歌」とか「涙そうそう」とか、定番曲。それを見た私は、ふと、ある曲が弾けるか聞いてみた。多分、知らないだろうなあと思いつつ。そうしたら、なんと彼はその曲が弾けたのだ。前にどこかで人前で歌ったことがあったらしい。

それは、ハンバートハンバートの「おなじ話」。

彼がこの曲を歌うのを聞いて、私はすっかりまいってしまった。そして、この人は私を上書きしてくれるかもしれない、そう思った。

なぜって、前に好きだった人との関係が始まったのも、同じ曲だったのだ。11月の冷たい風。彼のアパートに歩いていって、扉を開けると暖かい空気とハンバートハンバートのやわらかな歌声がしみだした。

そこから始まったお話しは、あまり美しいとはいえない終わりを迎え。もう「同じ話」を聞くことはしばらく無いだろうと思っていた。色々なことを思いだしてしまうから。

でも、思いがけず再会してしまった。また違う話が始まってしまった。仕方ない。

終わるときは、どうしても逆らえない流れに巻き込まれ終わってしまう。でも、続くところまで続くといいなと思う。

サポート頂くと、家に緑が増えます。たぶん。