介護保険物語 第10回 その2
どうも!
社会福祉法人サンシャイン企画室の藤田です。
大変な好評をいただいている「介護保険物語」第10回。
大変なボリュームとなりましたので、今回は5回に分けて発信してまいります。
今回は「その2」です。早速まいりましょう!
2 地域包括システムの推進
随時声を大きくして言っておくことが大事
藤田 では2つ目の「地域包括ケアシステムの推進」についてです。これはどうでしょう?
森藤 これも毎度のテーマでして(笑)。
でも社会全体で介護をみるんだよ、という火は燃やし続けておく必要がある。そのために「地域包括ケアシステム」という名称があることがとても重要なことなんだと思います。随時声高に「地域包括ケアシステム」と言うことが大事なんです。
藤田 なるほど。「石焼き芋」と同じですね(笑)。あの声聞くと食べたくなるように(笑)。
それでこの「地域包括ケアシステム」ですが、今回はこれを推進するとして次の6項目が挙げられています。
これについてはどうでしょう?
森藤 まあこれらはどれも改正の都度都度に触れられてきたもので、あまり目新しさはないんですが、一つ目に留まったのは、介護に直接携わる職員のうち、医療・福祉関係の資格を有しない者について、認知症介護基礎研修を受講させるために必要な措置を講じることを義務付けたことがあります。(❶の中で謳われている)
藤田 ほうほう。
森藤 まあこれについては後で述べましょう。
「認知症への対応力」とはなんのこと?
藤田 そうですか。じゃあ最初からひとつずつ取り上げていきたいのですが、まず①の認知症への対応力を向上しようということについて。
これに関して個人的な興味でお聴きしたいことがあります。「認知症への対応力」とあるんですが、そもそもこの「認知症への対応力」って、森藤部長的にはなんだと考えておられますか?
森藤 そうですねえ。認知症の方はときにその周辺症状と呼ばれる症状が出ることがおありで、なんらかの事情で穏当でいられなくなることがありますね。そうしたときこそこの「認知症への対応力」が問われるんだと思います。
目の前の利用者様に、どう対応すれば一番穏やかに治まるかを判断する能力と言いますか、なにがあっても対応していける柔軟さのようなもの。
もちろんその答えは利用者様ごとに違ってくるわけで、それを介護する側が自分で発見する、発見できる能力でもあります。
そうした能力の大前提にあるのは、その人をそのまま受け入れる許容力があることです。そしてその相手と付き合いを通して信頼関係を作り上げていくという過程を歩める能力。
どんなことがあってもその人を受け入れていく。決してネガティブにならない。
そんな能力だと思います。
藤田 はあああ。それは大した能力ですね。でもそうですね。わたしもそういう能力が欲しいです。
でもそうした能力って、身につけるのが大変そうですが(笑)。
「看取りへの対応」その肝は?
藤田 では次の②看取りへの対応の充実についてです。これはいかがでしょう?
森藤 これはですねえ、こうすればいい、といった解決法がなくてなかなか難しい問題だと思います。
一般にはやっぱり病院で亡くなる人が多いわけで、そんな中で家や施設でなくなりたいとなったとき、どうしたら家でみていけるのか、その方策を考えなきゃいけません。
うちの施設でもこうした問題について事前に話し合うことはあまりないですねえ。どちらかと言うと病院に連れて行って欲しいという家族さんが多いとは思います。
でもここで言ってる「看取り」は在宅でのことですからね。
藤田 あ、そうなんですか。わたしはてっきり施設でのことだとばかり思ってました。
森藤 「地域包括ケアシステム」の推進という項目の中のことですから、これは在宅での看取りについてです。
それとここで言ってる看取りは、きちんとした看取りをしてください、ということであって、看取りの数を増やせということではありません。
訪問看護とかの在宅事業者に対する文言でしょう。看取りの数はもともと少ないようですから。
「医療と介護の連携の推進」こちらは特に言いたいことはなし
藤田 そうですかなるほど。では次の③医療と介護の連携の推進についてです。これはどうでしょう?
森藤 これも在宅でのことでして、在宅では医療と介護がごちゃまぜになっているようです。でも医療と介護では関わる組織は別じゃないですか?その連携がうまく取れるようにしましょうということでしょう。
これに関してうちとして関われることはほとんどありませんね。これも訪問系事業所への提言でしょう。
「ケアマネジメントの質の向上」どういう能力を向上させるの?
藤田 そうですか。ありがとうございます。では次は⑤のケアマネジメントの質の向上について伺いたいのですが。
これも個人的におたずねしたいのですが、ケアマネジメントの質の向上というのはどのあたりの能力の向上のことなんでしょうか?
森藤 いやあ、わたしはケアマネじゃないのでよくはわからないのですが(笑)、想像するにマネジメントの力というのは、誰とでも対等に対応できる力ではないかと思います。
藤田 ほうう。これまた面白いご意見ですね。そこのところ、もう少しお願いします。
森藤 結局は人間力というか、対人関係をうまくマネジメントできる能力だと思います。カンファレンスなんかに出席しても、医者や看護師をリードしていくことができる能力であり、ビジョンをもって説得して引っ張っていける能力。
これってない人はないんですよ。ケアマネ試験でそんな能力は問われませんし。言ってみれば個人の力です。そういう人がケアマネになってくれればいいけど、そういう人はケアマネにはならないんですよね(笑)。
藤田 そういう能力って、ケアマネに限らず、どんな組織でも望まれる能力ですよね。そりゃあそういう能力はあればいいのでしょうけど、今現在ない人にそうした能力を求めるのって、言ってみればないものねだりじゃないですか?
森藤 だから主任ケアマネというのを作ったんですね。
藤田 なるほど。でもそうした能力って、それがあるかどうか、あるならどのくらいあるのかそれを測れるような、なにかの指標みたいなものってあるんですか?
森藤 いやあ、ないんじゃないの?
藤田 ではそういうマネジメント力って、努力によって身につけることができるんでしょうか?
森藤 そういう能力は大事な能力で、なんとかして身につけたいという意識があれば少しは身につくんじゃないでしょうか。
「認知症介護基礎研修を受講」する意味
藤田 うんうん。なるほど。ありがとうございます。では最後の⑥認知症介護基礎研修を受講させるために必要な措置を講じることを義務付けた、についてどうでしょう?
森藤 最初に言いかけましたけど、この項目が一番目を引きました。というのは、ただちに「なんで資格のない人だけなの?」という疑問が浮かぶからです。
介護福祉士などの資格を持ってる人も受ければいいんじゃないの?と思うんですが、そういう人は別に認知症介護の研修を受ける必要はないわけで。
それに第一、認知症への対応力というのは、先程も言いましたが、実際は介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員などの資格を持っていようがいまいが、あまり関係ないような気がしますけど。資格とは関係なくて、その人の個人的な力だと思いますから。
だから 聞いてみたい気がします。
おそらく思うに、介護業務を行なう者は必ず何らかの有資格者であり、介護というものは、無資格な素人でも誰でも彼でもできる、というものではありませんよ、ということをそれとなく匂わせているのじゃないか。
介護に携わっている人達はそれなりの意識を持ち、知識を身につけているんですよ、ということを社会に発信し、介護従事者のステイタスを確保しようという思惑があるのじゃないでしょうか。
そこから翻って言えば、なので介護従事者の皆さんもしっかり自覚して職務に当たってくださいね、と言いたいのかもしれません。
確かに、介護現場には様々なレベルの人々が介護職員として入ってきます。中には老人介護などに志あって入職してくる人々もいますが、「とりあえず仕事を」と人手不足の介護の職場を選んでくる人々も少なからずおられます。
そういう人々が入職後に介護職員として成長できず、よどんでしまったりすると職場の雰囲気を乱してしまう原因にもなったりします。すなわち、「悪貨は良貨を駆逐する」ということですね。これでは人を確保したはずなのに、他の介護職員が逃げ出してしまったということにもなりかねませんからね。
で、話を戻しますと(笑)。
無資格で入ってきても、こういう研修を受けさせなさい、ということになると、全員がなんらかの資格をもつことになります。
その研修を受けますと修了証がもらえます。そしてその次のステップもあります(「認知症介護実践者研修」やさらに次の「認知症介護実践リーダー研修」など)。
ここまではっきり資格をとらせろ、と言ってくるのにはやっぱり少し目を瞠りますね。やらなかったら減算になるわけです。もっともこれは特養の話で、デイサービスは関係ないですけど。
藤田 なるほど。でもまあ思いますが、その人を入れた以上は、その人をしっかり教育していくことが必要なのじゃないですか?
入職した人の教育こそが施設側の責務?
森藤 それ!それがもうひとつのテーマなんですよ!
藤田 え!?なんのですか?
森藤 「介護のポテンシャル」ですよ。あそこではこれまで「第1回 新人介護士へ向けての『介護士の心構え』」それに続いて「第2回 ベテラン介護士に向けての『介護の心構え』」とやってきてるじゃないですか。
その第3回は雇う側(施設)へ向けての『介護士の心構え』を考えてて、それで心構えシリーズが完結するんですよ。
藤田 あ!そうだったんですか!それは面白そうです。ぜひそれでお願いします。
森藤 そうなんです。施設がちゃんと教育する場をつくらなきゃだめなんです。専門学校では2年間介護の勉強をしますが、あれは知識しか入らない。
介護士は職人ですから。施設に入って熟練していくんです。だから施設は学校みたいなものなんです。教育機関なんですよ。施設がそういった自覚を持たなきゃだめなんです。
入れたのなら責任もって育てなきゃいけません。
藤田 はああ。だんだん熱くなってきましたね(笑)。
わかりました。じゃあそれでぜひお願いします。
ということで次の話題に移りたいと思います。
以下はまた次回!
<広島弁まとめ>
令和3年改正5項目の②「地域包括ケアシステムの推進」について
「石焼~き芋~」いう声を聞いたら芋を食べとうなるじゃろう?あれと同じで、いついき「地域包括ケアシステム~」言うとくことが大事なんよ。ほんでもって中身じゃが、「認知症への対応力」言うんは、その人がおかしうなりかけた時にうまあく元に戻って来てもろうて、落ち着いてもらえるようにする能力よのう。言うんは簡単じゃが、この能力をもっとる人はあんまりおらんでえ。ほいでも大事な力よのう。ほいで「看取りへの対応の充実」言うんは、しっかり看取ってほしいゆうことよ。クオンティティよりクオリティよ。「ケアマネジメントの質の向上」言うたら誰とでも対等に対応できる力のことじゃけど、まあ基本的な人間力よのう。ほんじゃけどそんな力はケアマネ試験には出てこんけえのう。ほいでもこうして求める言うんはちょっとおかしいわいや。最後の「無資格者への認知症介護基礎研修受講義務づけ」言うんは❶「認知症対応力向上へ向けた取組の推進」の中に書いてあることなんじゃけど、結局あれよのう、仕事で介護する者には全員なんらかの資格をもたせよういうことじゃないかのう。こうやって介護士のレベルを上げよういうことなんじゃろうて。
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