【叡王戦第4局】藤井叡王ABEMA AIの速さを超えた23手詰発見と菅井八段が魅せた振り飛車の可能性

昨日は叡王戦5番勝負の第4局が行われていた。仕事があったので対局の様子は棋譜中継から見ていたのだが、帰宅するとなんとびっくり。勝負は2回連続の千日手となって3回目の指し直し局が行われようとしていた。

1局目の千日手はお互いに持ち時間を使わないまますぐにそうなったので意外さは大きくなかったが、まさかあの終盤の局面まで死闘を繰り広げた末にああなるとは…。

3局目はABEMAで視聴することができたが、勝負の分かれ目がかなり早い段階できていた。「またしても千日手か?!」という局面が訪れるも、菅井八段はこれを回避。そこからは比較的単調な捌きあいとなったが、そこから一気に菅井八段が逆転しづらそうな形勢に変わってしまった。

▲1五歩というのは良い勝負手で普通は同歩と取るか攻め合いを選ぶかというところ。しかし、そのどちらもAIの最善手ではなく、最善手はなんと△同角として香車と角を交換する手。かなり浮かびづらい手だが、藤井叡王はなんなくその最善を選んだ。

そこから最後までの切れ味はさすが藤井叡王という感じだ。ABEMAの評価値は藤井叡王が90%を示していたが、彼が指した瞬間に一瞬菅井八段の評価値が上がり、すぐに藤井叡王が99%となった。

ABEMAの将棋AIが発見するよりも早く詰み筋を見つけ出したということだ。解説をしていたプロでも見落としていた非常に鋭い23手詰を少ない残り時間で発見した。そこから藤井叡王の指し手に迷いは一切なく、「読み切りました」と言わんばかりにほとんどノータイムで指していった。

おそらく局面的には詰まさなくても勝勢だったのだが、この切れ味はさすがというほかない。

とはいえ、個人的なことを言うとこの戦いでは私は菅井八段の方にかなり感情移入して感極まってしまった。この日行われた対局の2局目は千日手になったものの、△6一歩と指せば菅井八段のほうがやや有利というソフト的な評価があり、菅井八段も対局後それに言及していた。

第3局でも後手番ながら中盤のソフト評価値で菅井八段が上回っていて、この負け方というのはとてつもなく悔しいものがあるんじゃないかと想像する。それは対局後の菅井八段の表情を見ても感じ取れたところだ。

しかし、結果は及ばなかったものの、振り飛車党として振り飛車の可能性を多くの人に見せつけたタイトル戦でもあったのではないか。藤井六冠という今の最強の棋士に対して、振り飛車の作戦を選択してタイトル戦で互角かそれ以上に渡り合えるという可能性を示したのだ。

両者の素晴らしい健闘に敬意を表したい。

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