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本当の平飼い卵の現場とは

佐賀の伊万里市にある「素ヱコ農園」で2ヶ月間インターンシップをしているAkiです。私は大学では栄養学、修士では農学について勉強してきたことから、普段の食について色々考え、気をつけている方だと思ってます。今回のブログでは、平飼養鶏の生産現場を知らなかった時とインターンシップをやっている現在とを振り返って、印象に残っていることをまとめました。

鶏も人間と同じ無意識なクセを持っていること

インターンシップを始めた頃は作業に追われて鶏を注意深く見ることができなかったのですが、普段の餌やりや卵集めを毎日する中で気づくことがたくさんありました。部屋のドアが開くと部屋の外をめがけて飛び出す子、私が持っているエサのパレットに乗り掛かる子や、気性が荒くて羽が他の子より抜け落ちている子など。人間と同じように鶏にも性格や行動のクセ、鶏部屋内での存在役割のようなものがあるのかと実感した瞬間が何度もありました。私がこの無意識なクセで思い出してしまうのが、ヒトの”食に対する無意識な選択”です。ついお腹いっぱいになるまでご飯を食べてしまったり、食後のスイーツがやめられなかったり、健康に悪いかなと思いながらやってしまうことが誰にでもあると思います。鶏にも食欲があまりなさそうな子や卵をクチバシで割ってしまう子がいます。それに対して何か言葉をかけてもっと食べるようにしたり、こちらがやめてほしいことを伝えたりすることはできません。だからこそ、生産者が気をつけて対策をしていく必要があることに気づきました。具体的には、日々の食事のエサの内容や質に配慮したり、卵を鶏から届かないように卵箱を改善したりなど環境を整備することです。

手間がかかることの真の意味が分かったこと

農業や動物を相手にした生産が読めないことの連続で大変なのは知っていました。でも実際に現場に入ってみると、飼育現場に慣れないことが多すぎました。素ヱコ農園では全て手作りで鶏舎を作っているため、ドアの立て付け具合などもバラバラです。最初の方はただの扉さえも、使いこなすのにコツが必要で、ものにイライラしていた時もありました。ドア以外にも卵箱や鶏糞が溜まっていく地面、餌箱や水飲み器の故障など、手直しが必要な場所もあります。私たち消費者が”生産者の手間”と聞くと、餌に何を使っているとか、素ヱコ農園だったらゲージ飼いではなく平飼いで、、、といった生産スタイルをイメージすることが多いと思います。しかし、現場では餌やりや卵集めなどの通常業務以外にも+αでやらないといけないことがたくさんあります。今回のインターンシップで、平飼い卵の生産にかかる手間の多さを体感しました。

効率化や働く人中心に考えることの大切さが分かったこと

さっきの手間がかかることにつながりますが、安定的な生産のためにやらなきゃいけないことが多いです。すぐにではないけれど、長期的に見てやった方がいいものが沢山あるからこそ、限られた時間で何をやるか?の基準を決めないといけない。私はヒト中心で進む物事や効率化重視する世の中の流れに、違和感を感じることがありました。でも、会社として事業として回す、継続させていかないといけません。ここのバランスを取るのが難しいと思いました。私は仕事もまだまだ遅くて、考えが甘かったなと思うミスもたくさんあります。社員さんが通ってきた失敗や後悔も自分ごとに考えきれていません。業務に追われて自分に余裕がなくなると、鶏主体で考えることが難しくなる時があります。効率化に偏ってしまい、鶏のことを考えられなくなっていないかと考えていましたが、効率化=人間主体で鶏への害が生じるという考え方が間違っていることに気がつきました。鶏の飼育環境のために限られた時間の中でどれだけ多くのことをできるかが、結果的に鶏にできる最低最大のことであることを痛感しました。私の考える鶏への気づきはあくまでも、鶏のことを少しでも理解できるきっかけでしかなく、効率化を重視することが会社の成果につながっていくことであると考え直すことができました。

現場の厳しさを知る楽しさを教えてくれた機会

平飼い卵は動物や環境に配慮した生産の一つの例ですが、理想的な農業や事業の実現には難しいこともあることをインターンシップで体感することができました。学部時代から関心があった動物性食品の生産現場。今ではインターネットで色々な情報が手に入りますが、リアルな現場での発見の数々は今までの自分の考えを振り返る大きなきっかけになりました。

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