彼女と彼女の読書感想文(村上さんのところ)
「村上さんのところ」という村上春樹さんが期間限定で解説したHPに寄せられた膨大な質問とその回答をまとめた書籍の感想を書いています。
村上春樹さんに質問をするとしたら、あなたは何を質問しますか?
好きな食べ物はなんですか?
どうしてあんなにも読ませる文章を書くことができるのですか?
オススメのジャズのアルバムを教えてください。
1Q84の続きはどうなっていますか?
世界中の読者からじつに色んな質問が寄せられています。
それに対するユーモアに富んだ回答や、真面目な答えがとてもおもしろいです。
同時に、世の中にはこんなにも疑問が溢れているのだな、人の数だけ質問があるのだなと興味深く読むことができる1冊でした。
473通もの質問と回答を読むのは正直とても疲れましたが、「これだけの量の文章をなにはともあれ読み切ったんだ」という事実は心地よい疲労感でした。
読書感想文を克服する方法
この本で最も役に立った質問と回答は「秘伝・読書感想文克服法」です。
それはいったいどういったものかと言いますと
読書感想文を書くコツは、途中でほとんど関係ない話(でもどこかでちょっと本の内容と繋がっている話)を入れることです。それについてあれこれ好きなことを書く。そして最初と最後で、本についてちょろちょろっと具体的に触れる。そうするとなかなか面白い感想文がすらすら書けます。「村上さんのところ」より引用
具体的でわかりやすいですね。
ここで少々僕の読書感想文についての思い出ばなしに付き合ってくださいませんか?
同じクラスの彼女と
僕は小学校の頃に「星新一」さんに出会って本を読む面白さに気づき、それからずっと本を読んできました。
とにかく次から次へと本が読みたくて図書館に通って、何か面白い本が無いか?と物色していく中で「村上龍」出会いました。
子供ながらに「限りなく透明に近いブルー」というタイトルに惹かれて手に取りました。
「コインロッカーベイビーズ」を読み、「5分後の世界」を読み(いつになったら目的地に着くんだろう?)、「367Y PAR4 第2打」を読み、69 Sixty nineを読み…(校長室で○○○をした記憶しかない)。
ハードボイルドな世界観に引き込まれました。
そして読書にはまりつつ、高校に入学。
「好きな本と作家」を用紙に書いて回す、というイベントがありました。
用紙を見ると、みんな漫画の本ばかり。
僕は「村上龍 Sixty-nine」と記入しました。
ある日、休み時間に図書館で時間を潰していたら同じクラスのKさんが
「君は本を読むのが好きなの?」と声をかけてきました。
「どうして?」と尋ねると
「少し前に、好きな本作家を書く用紙を回したじゃない?あの時に見たの」と彼女は答えました。
それから彼女と本の話で盛り上がり、そのまま付き合うことに…
なんてことはなく、そのままクラスメイトとして過ごしていました。
彼女の読書感想文
時が過ぎ、高校生活も1年が終わるころ、「1年間のまとめ」みたいな冊子が配られました。
各部活動の活動報告やクラスの寄せ書きを集めた文集のようなものです。
高校はこんなものがあるんだな、と思いながら読んでいると、読書感想文の最優秀賞が掲載されていました。
その受賞者はあのKさん。寺山修司の「書を捨てよ、旅に出よう」についての感想文でした。
その文章が本当に見事過ぎて「あぁ、この人が本当に本が好きで、だからこんな素敵な文章が書けるんだな、僕なんて全然深く読めてなかったし、書けない」と思わせるものでした。
そして僕は自分で勝手に打ちのめされていました。「読書好き」とはいうものの、レベルが違う、違いすぎる。
その感想文は高校1年生の女子にとっては(彼女にとっては)深い悩みがあり、それをどうしようかと考えているけれど、本を読むことで自分は救われているんだ、という内容だったと記憶しています。
「読書感想文」と聞くと僕はそのことを思い出します。
「書くこと」についての意識が芽生えた瞬間だったのかもしれません。
実に色んな話題がこの本の中には収められています。
村上春樹さんが好きな方はもちろん、村上春樹なんて大嫌いだ!という方も、村上春樹?誰それ?という方にも楽しめる本だと思います。
全部読もうと思うとそれなりに大変なので、適当にページを開いたところを読んだりするのもいいかもしれません。
それにしても、村上春樹さんの本を読んだ後だとどうしてもそれっぽくなってしまいます。
自然と真似したくなるのか、無意識にそうしてしまうのか、脳みそに残っているのかなんなのか?そんなことってありませんか?
引用の通りに書いてみたつもりですが、そうそう簡単にいきませんね。
数をこなすことでこなれてくるかもしれません。本が好きですので、おもしろい読書感想文が書けるようになるといいなぁ。
そうして、いつかどこかで、彼女ともう一度会えたら。
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