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テキーラロドリゲスのNOMADOコラム #7

『アール・ブリュット』という言葉、聞いたことがありますか?
ヨーロッパ発の新しいスイーツ?
今度デビューするガールズグループの名前?
いえいえ、『アール・ブリュット(Art Brut)』というのは、フランスの芸術家のジャン・デュビュッフェによって提唱された言葉で、現代においては、“専門的な美術の教育を受けていない人などによる、独自の発想や表現方法が注目されているアート”を意味しています。要するに、特別な芸術の勉強をしてきたわけでは無いけれど、自分なりに、自分らしく作品を作っていらっしゃる作家さん達の作品です。
今、東京都渋谷公園通りギャラリーで【アンフレームド~創造が無限を羽ばたいてゆく~】というアール・ブリュット作品の展示をしています。
展示を見終わって、ハートがウォッシュされちゃったので、是非皆様にもご紹介させてくださいませ。

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ここで紹介されている作家さん達の、アート作品を作りだしたきっかけやモチベーションは本当に様々。そして、内容も手法も自分が書きたいように、やりたいように。

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ある方は生きることに苦悩した結果、お母さまの勧めで絵を始めた作家さん。
自分で決めて描くというよりも「頭のなかに見えてくるイメージに従い、描いている」とのこと。鮮やかな色彩に目を奪われます。

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またある人は、大学生の時に精神疾患になり、自分の中にいる守護霊や精霊、自分の心境、世界情勢などを12色の油性ペンで描く作家さん。大きなサイズの作品で、彼の中からは、描きたいことや言いたいことが溢れかえっているんだな、と感じました。

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孫にプレゼントをするために近所のおもちゃ屋さんを廻って、おもちゃを探したけど、どうしてもあげたいと思えるものが無いので、自分で作ったというところが制作の原点になっている作家さん。現在はグルースティックという工業用の接着剤を使った作品が主になっているようです。お孫さんに作ってあげたおもちゃ、見てみたいですよね!

などなど、総勢11名の個性豊かな作家さんの作品が紹介されています。
アートの世界って、才能があるのは勿論の事、家庭環境や運にも恵まれたりしている人たちの特別なものであって、自分とは縁遠いと感じている人も多い気がします。縁遠いどころか、私は手先も不器用だし、芸術的な発想も乏しく、図工・美術の授業を苦痛と感じているような学生でした。そんな私からすると、余りにもアートが過ぎると、アレルギー反応的な感覚すら(笑)。世の中が評価する、または著名人が絶賛する芸術作品を見て、正直何が良いのか理解出来ない時、理解出来ない自分のほうが悪いのでは、、と罪悪感を感じたりなんてありませんか?!

でも、今回『アール・ブリュット』を見て感じたのは、どんな人でも個性があって、自分なりの考えがあって、それは誰もがアーティストであり、「表現」は選ばれし特別な誰かだけのものでは無いって事。自分の内面をアウトプット出来るのは、芸術家やアーティストという肩書を持っている人だけでは無い、誰しもその権利を持っているって事。そしてその表現に正解とか不正解は無いって事。

別に芸術作品だと分かりやすいというだけで、お料理だっていい、短歌でもいい、カラオケだっていい、DIYだっていい、自分の字でもいい、洗濯の干し方だっていい、実は何をしても自己表現なんですよね。多様性が叫ばれている世の中で、アートの多様性だって、人の概念のなかの芸術というフレームの外に飛び出し、誰もが自分を表現しやすくなり、世の中もそれを自然に受け入れることが出来れば、生きやすいと感じる人が増えたり、もっともっと世界は色どりを豊かにしていくのだろうな、なんて誰目線だか分からない、偉そうなことを考えながら会場を出ました。完全にアール・ブリュットにあてられちゃって、なんだか心洗われちゃって、何者かにでもなった気になっちゃいました~。

そのテンションで、久しぶりに家のメモ帳にちょこっと絵を描いてみたら、はい、わかりやすく、シンプルに下手くそ!!ってことで、冷静に、現実世界に戻りましたとさ。そりゃ、そうだ。日本国民全員が「芸術を爆発」させていたら、日本は大炎上からの焼け野原。でも、この展示を見てから、芸術に対する私のアレルギー症状が少し軽くなったような気が。

私の様に、アートやアーティスト様への尊敬と畏怖の念から、息切れ、動悸、かゆみ、腹痛を感じてしまう芸術アレルギーをお持ちの皆様、是非とも症状緩和の為、『アンフレームド~創造は無限を羽ばたいてゆく~』を訪れてみて下さい。

iguana寝てる


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