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18-19 PL 第22節 West Ham × Arsenal

前節フラム戦で勝利の後、FAカップも順調に勝ってのロンドンダービー、ウェストハム戦。モンレアル、ベジェリンなど怪我で離脱していた主力メンバーが数人戻ってきたことでスカッドは一時のことを考えると充実してきた。が、怪我から戻ってきたエジルはこの試合でサブにも名を連ねず。エメリ曰く戦術的な理由とのこと。対するウェストハムは21節終了時点で10位。この冬の移籍シーズンで元アーセナルのナスリが加入。CL出場権獲得のため勝たなくてはいけないロンドンダービーだ。

前回対戦のレビューはこちら
18-19 PL 第3節 Arsenal×West Ham

■チーム概要
・ウェストハム(監督:マヌエル・ペジェグリーニ)
フォーメーション
基本:4-2-3-1

・アーセナル(監督:ウナイ・エメリ)
フォーメーション
基本:3-4-3

■前半

ホームのウェストハムは、ビルドアップでライスをCB間へ落として両SBを押し上げ、ナスリやアルナウトビッチでタメを作りサイドを中心に攻め込む形が多く見られた。特にコラシナツの上がった裏のスペースをアントニオが使うシーンが多く、ウェストハムとしては狙っていた形なのかもしれない。

それに対してアーセナルは、そこまで積極的に前線からプレッシングは行わず。基本的にはミドルサードあたりから徐々にプレッシングを開始しているように見えた。

アーセナルのビルドアップは、GKレノと3CBでボールを保持しつつ、両サイドのCBがボールを保持した際にシャドーへ当ててサイドへ、そこから前進する形が多かった。特に左サイドはコシエルニーがいることでビルドアップは上手く機能していたように思う。コシエルニーの持ち上がり、イウォビのライン間ポジショニングが効いており、上手く運べているシーンが多かった。

ウェストハムは、アーセナルよりも積極的に前線からプレッシングに来ており、ビルドアップ阻止を狙う。ミドルサードからは撤退守備。しっかりとブロックを作って守る形に。メリハリのある意図を感じる良い守備だった。

前半20分ほどはお互いにそれなりに攻め込むも大きなチャンスまではいかず。しかし22分にアーセナルの良い崩しからチャンスが生まれる。ここも左サイド、コシエルニーのドライブからジャカへ縦パス。サイドのコラシナツとパス交換を行いジャカが前を向く。ハーフスペースかつライン間にポジショニングしたイウォビへ縦パスが入り、絶妙なタイミングで裏抜けしたコラシナツへイウォビからワンタッチのスルーパス。ポケットへ侵入しマイナスのクロスを出すもウェストハムのライスがこれを阻止。アーセナルの先制点とはならず。ただ非常にきれいな崩しで、この試合ここまでで一番大きなチャンスとなった。

その後30分が過ぎたあたりからウェストハムの守備が機能し始める。アーセナルのCH2枚(ジャカとゲンドゥージ)に対してウェストハムのCH2枚(ライスとノーブル)がついてビルドアップを阻止。徐々にアーセナルはボールを前へ運べなくなり、試合はウェストハムペースに。いつアーセナルが失点してもおかしくないような状況に。

しかし試合はそのまま動かず、スコアレスのまま前半が終了する。

■後半

前半はウェストハムの守備に手を焼きうまくいかなかったアーセナル。今までの流れだとエメリが後半開始頭から交代カードを切りフォーメーションを変えてくるだろうと予想されたが、意外にもこの試合ではカードを切らず。両チームともに前半と同じメンバーで後半がスタートする。

ウェストハムは前半と同様に後半も開始早々から積極的な守備を見せる。特にCHのゲンドゥージには激しくプレッシングを行い、前を向かせない。そしてそのプレッシングから奪ったボールでフリーキックを獲得。そのフリーキックはアーセナルが守りコーナーキックとなるが、このコーナーキックがウェストハムのゴールにつながる。F.アンデルソンが蹴ったボールをアーセナルが一度クリアするもセカンドボールを拾われ二次攻撃。F.アンデルソンがサイドをえぐり中へ、これをジャカがブロックするもクリアは中途半端になりボールはナスリの足元へ。ナスリは落ち着いてトラップし、前を向いていたライスへ優しくパスを転がす。ライスが放ったシュートはコースも強度も良く、GKレノはノーチャンス。48分、後半の早い時間帯にウェストハムが先制する。

その後もアーセナルは、なかなかウェストハムの守備陣を崩せず。たまらずエメリは2枚替えを実行。ジャカ、ムスタフィを下げてトレイラとラムジーを投入。フォーメーションを4-2-3-1に変更する。

64分にショートカウンターから左サイドでイウォビ→コラシナツ→オーバメヤンでシュートチャンス。67分にはラムジーのフリックからイウォビでシュートチャンスを演出するもゴールならず。ただ、アーセナルの中央に枚数が増えたことでボールを前進させることができるようになり、徐々に試合はアーセナルペースに。

アーセナルは69分にはナイルズに替えてベジェリンを投入。早くも交代カードを使い切る。対するウェストハムは、ナスリとアルナウトビッチを下げてスノッドグラスとキャロルを投入。この交代でナスリがコースを切る守備だったのに対し、スノッドグラスはトレイラにマンマーク気味でつく守備に切り替わる。

さらにその後82分にウェストハムはアントニオを下げてオビアングを投入。スノッドグラスを右SHへ、CHのノーブルを一列上げてトレイラを見る形、オビアングはCHに。この試合数少ないチャンスを演出しているアーセナルの左サイドをスノッドグラスで封じ、バイタルのスペースはオビアングで潰す意図があったように見えた。

このペジェグリーニの采配がズバリあたり、その後アーセナルはボールを前進させることができなくなり攻撃陣は沈黙。そのまま試合終了となり1-0で今シーズン2度目のロンドンダービーはウェストハムが勝利を収めた。

試合結果:West Ham 1 × 0 Arsenal

■得点
48分:ライス(アシスト:ナスリ)

■交代

59分:ムスタフィ → ラムジー
59分:ジャカ → トレイラ
69分:ナイルズ → ベジェリン
71分:アルナウトビッチ → キャロル
71分:ナスリ → スノッドグラス
82分:アントニオ → オビアング

■まとめ

アーセナルは何度かチャンスを作れたものの、決定的に崩せた場面は数えるほど。内容としてはかなりひどいものだった。対するウェストハムは守備から試合のペースを掴み、得点を奪ってからも守備からカウンターが上手く機能しており勝利にふさわしい戦いだった。エメリの選手交代を含む采配に対するペジェグリーニの采配も見事だった。

エメリは、おそらく守備面(被カウンター)のことを考えて3バックを採用してるのだろうと思うが、CB前のスペースやWB裏のスペースをCH2枚でカバーすることになり、なかなか限界が来ているように思う。また、それをするならゲンドゥージではなくトレイラを起用するべきではないかとも思う。

得点が欲しい段階になって4バックに変更し、サイドから奥深くへ侵入を試みるもブロックを形成されて崩せず。サイドから深くえぐるためには、まずその手前で守備ブロックにスペースを生み出す事が必要になる。こういった時に相手の状況を見て的確あポジショニングとパスセンスで相手守備にほころびを生み出せるのはエジルではないかと思う。

しかし、この試合でサブにもエジルはいない。エメリが切ったカードはラムジーだった。ラムジーはスペースがあれば輝くが、スペースを創り出す選手ではないと感じる。スペースを創り出すのに長けているのはラムジーよりエジルだろう。

戦術的な理由でエジルをメンバーから外したと話すエメリ。戦術的に考えてもサブメンバーにエジルを入れておくことで選択肢が広がると思うのだが、エメリはそれをしない。エジルの高給で給与の問題を圧迫していたり、エジル自身のパフォーマンスにエメリが満足していなかったり、本人同士の関係性に何か溝があったりと、いろいろと噂は囁かれている。移籍期間ということもあり、やはり戦術的な理由でメンバーを外したのとは違う意図があるように思えてならない。

シーズンも半分が過ぎたが、未だエメリの考えるチームとしての形が見えてこない。ここまではどちらかと言うとアクションサッカーというよりは、相手に合わせるリアクションサッカーのように見える。後半開始や試合途中から相手に合わせてやり方を変える形。前半はどちらかというと様子を見るような。頑固なまでに形をなかなか変えようとしなかったヴェンゲルとは真逆だ。これが良いか悪いかは別として、もう少しエメリアーセナルとはこういうチームだという形を示して欲しい。今の形を様々変えるのがエメリアーセナルだと言われればそれまでなのだけれど。

次節はホームで4位チェルシーと戦うビッグロンドンダービー。
勝ち点差6で5位のアーセナルとしては、絶対に勝ち点3が欲しい試合だ。
6位のマンチェスターユナイテッドと勝ち点でも並んでいる。

勝てばCL出場権を勝ち取れる4位の道が少し見えてくるが、負ければCL出場権は大きく遠のき、5位6位争いが現実的になってくる。まさに正念場。

今の悪い流れをビッグロンドンダービーの勝利で払拭してほしい。