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18-19 PL 第29節 Tottenham Hotspur × Arsenal

前節ボーンマス戦で5得点を奪い快勝を飾ったアーセナル。中2日の過密日程で対戦するのはスパーズ。ウェンブリーで行われるノースロンドンダービーだ。28節終了時点で3位のスパーズは現在2連敗中と調子を崩し優勝争いから一歩後退。対するアーセナルは2連勝中で暫定4位に浮上。このノースロンドンダービーでアーセナルが勝てばお互いの勝ち点差は1に縮まる。ダービーらしく非常に重要な一戦だ。

ホームのスパーズは、デレ・アリが負傷中でメンバー外。アーセナルはリヒトシュタイナーが背中の負傷から戻れず。ナイルズも病気明けということで大事を取ってスタメンには名を連ねず。空席となってしまった右SBにエメリが選んだのはムスタフィだった。

契約満了により来シーズンからユベントスへの移籍が決まっているラムジーにとっては、これが最後のノースロンドンダービーとなる。

PLでの前回対戦時レビューはこちら
18-19 PL 第14節 Arsenal × Tottenham Hotspur

■チーム概要

【HOME】
トッテナム(監督:マウリシオ・ポチェッティーノ)
フォーメーション
基本:3-4-1-2
保持:3-4-1-2 → 3-1-4-2
非保持:3-5-2 → 5-3-2

【AWAY】
・アーセナル(監督:ウナイ・エメリ)
フォーメーション
基本:4-2-3-1
ボール保持:4-2-3-1
ボール非保持:4-4-2

■前半の試合展開

ノースロンドンダービーらしく試合開始から互いにボールを奪い合う展開でスタート。スパーズは右CBに入ったアルデルヴァイレルトからビルドアップを開始することが多かった。ソンフンミン、ケインの前線2枚にロングボールを蹴り、セカンドボールをエリクセンが狙う形。またはショートパスで右WBのトリッピアー、CHのシソコへつないでの組み立てが良く見られた。対するアーセナルは、前線プレス時にラムジーを前に上げた4-4-2でセット。スパーズの右サイドからの攻撃に対してイウォビがトリッピアー、シソコにジャカがマークにつき、ビルドアップを阻止していく。

そして試合開始からわずか2分。早々にアーセナルに得点チャンスが生まれる。スパーズを押し込んだ状態から大外のイウォビがドリブルを仕掛けカットインからパスを選択。パスはワニャマがブロックするもボールはDFラインの裏へ。そこへ流れていたラカゼットがダイレクトでシュートを放つも上手くミートせずボールはゴール右へそれてしまう。惜しくもゴールにはならなかったが、ドリブルのコースを空けたラムジーの相手を釣る動き、イウォビの仕掛けるドリブルと、良いオフェンスだった。

アーセナルはGKレノからショートパスを中心にビルドアップ。かみ合わせからSBが浮くことが多く、そこを中心にボールを前進させる。右SBに入っているのが普段はCBのムスタフィということもあり、オフェンスは左サイドのイウォビ、モンレアルを中心に組み立てていく。右サイドはゲンドゥージの頑張りで何とかしているというような感じだった。

引き続きスパーズはロングボールを中心に組み立て。特に高さの無いモンレアルにケインをあてて、そこへロングボールを蹴りセカンドボールをソンフンミン、エリクセンで回収してボールを前進させる形が多く見られた。それ以外だとシソコのドリブルで前線に運ぶ形。主にこの2パターンが攻撃の軸となっていた。それに対してアーセナルは、撤退守備時にDF4枚が中央へ圧縮。大外はSHが戻って守る6-3-1のような形で守備。ライン間も圧縮したコンパクトなディフェンスでシュートチャンスを与えない。ただ、自陣深くまで全員が戻っていることでポジトラ時になかなか前線へボールを運べず。スパーズがボールを保持する時間が長くなる。

しかし16分。そういった状況がアーセナルに味方する。ロングボールをきっかけにアーセナル陣地深くまで攻め込んだスパーズだがケインはシュートまでいけず、ボールを奪取したアーセナルはジャカが前線へ大きくクリア。アーセナル陣地まで全員が上がっていたスパーズだったが、最終ラインに残っていたサンチェスがこのクリアボールに対する処理をミス。ラカゼットがボールを拾い、すかさず裏へ抜けたラムジーへパス。ハーフウェイライン手前でのパスだったのオフサイドは無し。ラムジーはそのままドリブルで運び、GKとの1対1も落ち着いて交わしてゴール。ウェンブリースタジアムでの試合に強い男がこの試合でもゴールを決めた。

24分、スパーズはトリッピアーのフリーキックからケインがヘディングで決めるも判定はオフサイドでノーゴールに。アーセナルとしては肝を冷やした瞬間だった。

その後もスパースがボールを保持し、アーセナルがカウンターを狙うという構図は変わらず。そしてこのまま前半が終了するかと思われた44分、スパーズが右サイド大外のトリッピアーからハーフスペースにいたケインへ。ケインが上手くタメを作ってDFライン裏へ抜け出したエリクセンへループパス。エリクセンがこれをダイレクトでシュートするもGKレノがセーブ。こぼれ球をシソコがシュートするも再度レノがセーブ。立て続けにGKレノがビッグセーブを連発しアーセナルを救う。

そしてこのまま前半終了。0-1でアーセナルがリードを守り試合を折り返す形に。

■後半の試合展開

後半スタートからリードしているアーセナルが動く。ゲンドゥージに変えてトレイラを投入。おそらくこの交代の意図は、エリクセン対策。エリクセンにマンマークでトレイラをつけることで、スパーズの攻撃の芽を摘むことではないかと思う。どちらかというと前後左右に動き回ってボールを循環させるゲンドゥージに対して、トレイラは中央付近に位置取りしてトランジションを中心にボール奪取する選手。ロングボールを軸にセカンドボール回収を狙うスパーズに対してトランジションに強いトレイラを入れることで中央でのボール回収率を高めようという意図に見えた。

この交代は功を奏していたように思う。実際、エリクセンをトレイラは抑え込んでいたし、後半開始からアーセナルはボール保持出来る時間が長くなっていた。

そして53分、そのトレイラがエリクセンからボールを奪取したことで得た右サイドのスローインからチャンスが生まれる。右SBのムスタフィから前線にいたラムジーへ縦パスを送り、そのレイオフを右SHのムヒタリアンが受けて前を向く。相手DF-MFのライン間で前を向けたムヒタリアンはドリブルで前進。ラカゼットへラストパスを送るもシュートまではいけず。しかし、そのこぼれ球をジャカが回収。今度は左サイドから攻撃を仕掛ける。ラカゼットへ縦パスを通し左SHのイウォビへ展開。イウォビ得意のタメから左SBのモンレアルがオーバーラップ。マイナスのクロスはフリーのラカゼットへ渡るも、これをラカゼットがうまくミートできずシュートは枠外へ外れてしまう。きれいに連動したアーセナルらしい崩しだったが、決定的なチャンスをものにできず。

アーセナルはここで早くも2枚めの交代カードを切る。ラカゼットに変えてオーバメヤンを投入。スパーズが前がかりになってくるため、その裏のスペースを突きつつ相手のDFラインを下げさせようという狙いかと思う。

その直後、スパーズも動く。ワニャマに変えてラメラを投入。ワニャマがいたCHの位置にエリクセンを下げてトップ下に交代で入ったラメラが入る。おそらくエリクセンに対するトレイラのマンマークを嫌がり、ポジションを下げることでエリクセンが前向きでボールを持てるようにしたかったのだろうと思う。

試合はアーセナルが主導権を握った形で進む。ボールを保持出来るようになったことで、相手を押し込むことに成功。さらにオーバメヤンを投入したことでDFライン裏へのパスが増えて相手を裏返すことが多くなる。チャンスにはならずともスパーズのDFラインを下げていることで間延びさせることができており、セカンドボールの回収率も高まっていた。更に各選手が1対1の対人で負けておらず、前へ跳ね返すことができていた。

なかなか上手くいかないスパーズは、フォーメーションを変えてくる。ローズを中央に絞らせてアンカーに。トリッピアーを後ろに下げて4-3-1-2の形に変更する。また、そのタイミングでアーセナルも動く。ラムジーに変えてエジルを投入。

その直後、スパーズがアーセナル陣地でのフリーキックを獲得。蹴るのはエリクセン。キックの直後、競り合いからムスタフィがケインを倒したということで笛が鳴り判定はPKに。キックのタイミングでオフサイドだったが、その判定が決定される前にムスタフィがファールを犯してしまったということで、このファールが優先されPKの判定になったようだ。この試合、ビッグセーブでノッていたレノだったが、ケインのPKは止められず。順調に試合を進めていたように見えたアーセナルだったが、ここで追いつかれてしまう。

79分、スパーズはソンフンミンに変えてジョレンテを投入。ジョレンテの高さ、強さを活かす狙いか。

その後、試合は両チームともに丁寧につなぐというよりはボールが上空を飛び交うようなトランジションの応酬に。そのまま試合が終わるかと思われた89分、ヴェルトンゲンの縦パスをムヒタリアンがカット。そのままヴェルトンゲンをドリブルで抜き去り持ち上がる。前線でオーバメヤンがタイミングを図りつつDFラインの裏へ抜け出し、そこへムヒタリアンからスルーパス。サンチェスはたまらずオーバメヤンを倒して判定はPKに。

蹴るのはオーバメヤン。決めれば試合を決定づけるPK。しかし、このPKをGKロリスが完全にコースを読み切りシュートストップ。アーセナルは勝ち越しのチャンスを逃してしまう。ただ、このPKではアーセナルにとって不運な点もあった。オーバメヤンが蹴った瞬間、ヴェルトンゲンはペナルティーエリアの中へ入っていた。更にこぼれ球を中に押し返したボールをクリアしたのは、このヴェルトンゲン。通常であればキックする前にペナルティーエリアに入っていた場合、蹴り直しとなるがこの試合ではそうならなかった。非常に残念な誤審となった。

試合はアディショナルタイムに突入。時間は5分。その後も互いに一進一退の攻防を展開を見せ、激しいボールの奪い合いが続く。そしてこのまま試合が終わるかと思われた94分30秒、セカンドボールを果敢に取りに行ったトレイラの足裏が勢い余ってローズに当たってしまう。このプレーが足の裏を見せた危険行為ということで、まさかの一発レッドカード。トレイラが退場処分となってしまう。これがレッドカードであれば、途中にあったローズのレノに対する足裏を見せたスライディングもレッドカードの対象になるべきだろう。

様々な不可解なジャッジがあり後味の悪いまま、ウェンブリーで行われたノースロンドンダービーは1-1の同点で終了となった。

■試合結果

Tottenham Hotspur 1 × 1 Arsenal

■得点
16分:ラムジー(アシスト:ラカゼット)
74分:ケイン(PK)

■交代
45分:ゲンドゥージ → トレイラ
56分:ラカゼット → オーバメヤン
59分:ワニャマ → ラメラ
72分:ラムジー → エジル
79分:ソンフンミン → ジョレンテ

■まとめ

互いに過密日程が響き、ロングボール主体のフットボールになっていたが、試合全体を通して主導権を握っていたのはアーセナルだっただろう。ボールは保持せずとも、ある程度は思ったとおりに試合を進められているように見えた。タラレバになってしまうが、試合開始早々の決定機や後半53分のきれいな崩しからの決定機を決めていれば、試合はもっと楽に進められていただろうと思う。

トレイラを投入し、エリクセンを抑えた采配。オーバメヤンを投入して相手を間延びさせた采配は見事だったと思う。しかしそれが一転、試合終了間際にオーバメヤンはPKを外し、トレイラは退場という悲しい結末になってしまった。加えて最後のノースロンドンダービーで鮮やかなゴールを挙げたラムジーの頑張りも誤審が影響して報われなかったのは非常にやるせなくなる。

アーセナルはこの結果、29節終了時点でマンチェスターユナイテッドに順位を抜かれて5位に転落。さらにチェルシーが未消化の試合を勝利で終えると6位に転落する。やはり4位争いを考えるとアウェーとはいえ、勝ち点3が欲しい試合だった。

次節はELベスト16のレンヌ戦(AWAY)を挟んでマンチェスターユナイテッドをホームに迎えての直接対決。これに勝てば引き続き4位争いに食い込めるが、逆に負けてしまうと一気に4位が厳しくなってしまう大一番。絶対に勝たなくてはならない試合が続く。